りそなの6000億円の公募増資

 11月5日に、りそなホールディングスが6000億円の普通株式の発行登録をしました。近日中にファイナンスの詳細が発表されると思いますが、この増資は、どう評価したらよいのか、いろいろ考えてみたいと思います。

 先月、シリーズで「エクイティファイナンスの裏側」を書き、その中で三大メガバンクエクイティファイナンス(公募増資)の「とんでもなさ」を書いていますので(10月17日付)、合わせて読んでください。

 まず、りそなホールディングスは、大和銀行埼玉銀行、協和銀行、近畿大阪銀行などが合併してできました。まあはっきり言って弱者連合なのですが、大和銀行の証券部が独立してできたのが野村証券であることは、今では知っている人は少ないと思います。

 りそなホールディングスが発足して間もない2003年5月に、同年3月期の決算での繰り延べ税金資産の自己資本への参入をめぐって監査法人2社が対立、結局一部の繰り延べ税金資産の参入が認められず、大幅な資本不足に陥ってしまいました。

 結局、預金保険法に基づく予備的注入の最初の発動となり、預金保険機構優先株・普通株合わせて1兆9600億円を引き受け、実質国有化されました。今回発表になった「資本再構築プラン」で優先株を買い入れ消却し、普通株を発行するのですが、買い入れ消却の対象になるのは、このとき発行された優先株で、現在1兆2635億円残っています。

 この優先株は、株式への転換条項が付いており、現在の転換価格は1000円前後のはずです。しかし、この転換価格は下方修正が付いており、下限まで下がった段階で全額が普通株に転換されると、なんと60億株も発行されてしまうことになります。現在の発行株数が12億株ほどなので、大変な希薄化を起こすため、この優先株を消却して普通株を発行するという理屈は、一応理解できます。

 さて、りそなホールディングスの株価ですが、発行登録された11月5日に(登録するという発表は前日深夜にされていた)ストップ安である100円安の512円になり、出来高も前日の4倍くらいに膨らみました。実に一日で1200億円の時価総額が吹っ飛んだことになります。

 株価は今年の春頃は1200円台でした。困ったことに11月5日の段階で時価総額がすでに6000億円程度になってしまっているので、このままだと実に株数を倍にしなければならないことになります。

 今回の普通株の発行については、もちろんその詳細は発表になっていません。幹事として野村証券とメリルリンチ日本とだけ発表されており、海外発行があるのか、その際の海外の幹事はどこか、などは発表されていません。

 ここで、三大メガバンクのファイナンス(10月17日付)で指摘した「とんでもなさ」と比べて、りそなホールディングスのファイナンスは「とんでもない」のかどうかを見てみましょう。

 1)三大メガバンクの場合、発行する株数のちょうど半分が海外向けです。海外向けと言っても大半がヘッジファンドへ販売しているはずで、彼らは借株を調達してきて先に売り、後で安くなった公募株を引き受けて借株を返却して、儲けて終わりです。

 つまり、その儲けは何処からきているかと言うと、みんな既存株主(ほとんど国内)の損失からきているのです。

 くどいようですが、ヘッジファンドは借株を先に売り、下がった価格の公募株を引き受けて返済するということは、メガバンクの株を保有するわけでもなんでもなく、ただ非常に短時間で儲けるだけなのです。

 しかもヘッジファンドに売るだけの海外の幹事にも高い手数料(4%前後)を払っているのです。りそなホールディングスの場合は、まだ海外発行があるかどうかが発表されていないため、この点については発表を待つしかありません。

 2)三大メガバンクの場合、貸し出しをどんどん回収して景気を悪くし、さらにその上に非常に少なくなっている株式市場のリスクマネーを大型ファイナンスで吸い上げているのです。つまり本来、信用創造をしなければならない銀行が、貸出市場と株式市場の両方で信用収縮をさせているのです。

 りそなホールディングスの場合は、公的資金である預金保険機構が保有する優先株を買い入れ償却するため、将来、潜在株が大きく膨らむことを回避できるわけです。公的資金を民間資金が肩代わりするわけですから積極的には評価できませんが、まあ許容範囲かな、と思います。

 3)三大メガバンクの場合、大体特定の外資系投資銀行にとんでもないメリットを与えているものです。三井住友のGoldman Sacks, 三菱UFJMorgan Stanley などで、この辺は10月17日付けの「エクイティファイナンスの裏側」に詳しく書いてあります。

 りそなホールディングスの場合、そもそも預金保険機構の保有する優先株は、普通株に転換できるうえ、転換価格も下方修正されます。これを外資系投資銀行が保有していたら、徹底的にトレーディングで儲けられていたところです。(注参照)

 これを、少なくとも外資系投資銀行ではなく、預金保険機構に持ってもらっていたことは、少なくとも外資系投資銀行に好きなだけ儲けられることはなかったことになり、結果論ですが、「良かったな」と言ったところです。まあ、預金保険機構が外資系投資銀行みたいにトレーディングで巨額の利益を出して国家財政に貢献してくれても良かったのですがね。

 もうひとつ、共同幹事に予定されているメリルリンチ日本ですが、今までも、りそなホールディングス優先株を買っています。それを昨年損切りして(まあ、トレーディングで十分儲けていたのでしょうが)、さらに1382円で普通株を引き受けてくれています。つまり三井住友のGoldman なんかと比べても、はるかに「良い株主」のようで、今回の増資で少しくらい手数料を支払ってもいいかな、と思います。

 それらを総合すると、りそなホールディングスの今回のファイナンス(公募増資)は、三大メガバンクに比べると、はるかに「まし」ということになります。ただ、「まし」と言っても、これはモラル面での話で、ファイナンスが成功するかどうかとは、全く別問題です。近々発表されるファイナンスの内容と、株価の推移を注意深く見守りましょう。

 (注)例えば優先株を保有し、借株で調達した株を売ります。株価が下がれば転換価格も下がるのですが(一度下がれば上がりません)、すぐには転換しないで、下がりきったところで買い戻して利益を上げ、上がったらまた売ります。こうやって優先株を保有していれば何回でもトレーディングで儲けることができるのです。万一、売っても株価が上がり続けた場合(あまり考えられないケースですが)は、やむをえないので優先株を転換して借株を返済します。転換価格は上がることはありませんので、どのケースでも絶対損をすることのないトレーディングが長期にわたってできるのです。この優先株は2003年に発行されているので、もしこれが外資系投資銀行などに持たれていたなら、多分数千億円もの利益が上げられていたはずです。同じころ、似たような転換型の優先株三井住友銀行がGoldman Sacksに2500億円程発行しているのです。