世界のファンド事情  その2

動き始めたドル・円をどう見る?

 ここ何日か、あまりマーケットと関係ない話題を書いていましたので、本日は、ちょうどドル・円相場が少し動き始めているので、為替の話題にしようと思います。

 11月3日に米国連邦準備理事会が6000億ドル(約49兆円)もの国債を市場から買い入れる、いわゆる第二次量的緩和を行いました。当然、ドルがもっと弱くなるという予想が圧倒的に多かったのですが、実際はむしろ逆で、11月10日にはドル・円で82円台を回復しています。なぜでしょうか?

 最近の量的緩和で恩恵を受けて資産を増やしているヘッジファンドが、率先してドルを借りて(あるいは運用資産のドルを)売却して、その他の国、特に新興国の通貨や株式などを買っています。ところが、ヘッジファンドのポジションは必ず反対決済しなければ利益が確定しないので、米国の金融緩和のあと、ドルがこれ以上、下がらないのを見て反対決済(ドルの買い戻し)をしてきたのです。

 もっとドルが反発したら、リスク軽減をしなければならないので、もっとドルを買い戻し、その結果またドルが反発するという動きになるはずです。逆にドルが再度下落し、ドル・円で80円割れとなれば、急速に新規のドル売りが入り(たぶんその前にドル売りのポジションがかなり買い戻された後のはずですから)、ドルはさらに下落する可能性が強いといえます。

 「なんだ、結局どうなんだ?」と言われると思いますが、現在の為替相場では間違いなくヘッジファンドが大きなポジションを持っています。今頃じりじりと強含むドルを見ながら、多くのヘッジファンドマネージャーが、「ドルをもっと買い戻すべきかどうか」と、固唾をのんで見守っているはずです。

 どのヘッジファンドも、長期的には米国の金融緩和とドル安が続くという基本シナリオなので、この時点では程度の差こそあれ、抱えたドル売りのポジションをどの程度買い戻すか、という判断だけを迫られているのです。

 間違っても、「ドルが少し戻ってきたから、もう少しこの水準で売り乗せてみよう」ということはありません。だから、戻れば戻るほど、ドルの買い(戻し)が出るのです。新規のドル売りが出るのは、再度ドルの最安値に近づいた時しかありません。

 だから、本当はこんな時に介入すると、どのヘッジファンも全く想定していないため、とんでもないパニックになり、ドルが急騰して90円くらいになるはずだと11月1日の本誌で書きましたが、まさに今がそのタイミングなのです。

 今後のことを考えると、ヘッジファンドに「日本の当局をなめると、とんでもない目に会う」と思わせることが必要なのですが、無理でしょうね。

 それより、言いたいことは、現在の為替(別にドル・円だけでなく全ての通貨)は、一連の金融緩和で運用資産を増やしたヘッジファンドの存在感が非常に大きいため、彼らの運用手法と、現在のポシション動向を理解しておく必要があるわけです。

 ドルが上昇すると、多くの評論家が、「米国の金利が上昇したから」とか「米国景気が上向く兆候が見られだした」などの後講釈を山ほど言い出すと思います。

 しかし今のドル・円についていえば、「ドルは上がればもっと上がる」、「上がらないなら、また売られる」、「ドルの最安値に近づけば、もっと激しく売られる」と言うことが分かるだけです。そして今しばらくは「ドルは上がればもっと上がる」の順番なのです。

 つまり、今の段階だけでいえば、ファンダメンタル分析はほとんど必要なく、従って経済評論家は全く必要なく(まあ、今に限らず、いつも必要ないと思いますけどね)、テクニカルにみる必要があるということなのです。

 結局、これがヘッジファンドの考え方や、動きを説明するのに一番手っ取り早いと思ったので、ちょうどドル・円が動き出したタイミングに合わせて書いてみました。

 本当は、ソロスなど、いわゆるグローバルマクロタイプのヘッジファンドについて、少し詳しく書こうと思ったのですが、次の機会にします。