「幻冬舎」のMBOについて

 10月29日に、ジャスダックに上場する幻冬舎(コード7843)に対し、創業者で代表取締役の所有する会社がMBOを行い、全株を取得して上場廃止とする予定であると発表しました。

 MBOとは、一般的に買収対象会社の経営者が買収資金の全部または一部を出資して、事業の継続を前提として買収対象会社の株式を取得することを言い、普通少数株主の監視を避けて思い切った経営をしたい場合に行われます。

  幻冬舎の場合もまさにこの目的のためにMBOを行うようですが、幻冬舎は平成15年1月の上場時にも、また現在に至るまで一度もエクイティファイナンスを行っていません。つまり上場企業であるにもかかわらず、ただの1円たりとも資金調達をしていないのです。

 株価は上場後の平成18年1月に100万円を超えましたが、ここ2年ほどは、業績は変わらず好調であるにもかかわらず株価は10万円で低迷していました。その間に市場から自社株買いをしたようで、現時点では自社株が発行株数の24%と、創業者の23%を上回っていました。

  そこで今回、創業者で代表取締役の所有する会社が、1株=22万円で自社株を除く全株を目標に市場から公開買い付けし、上場廃止とすることに決めたようです。

 直近の平成22年6月時点では、株主資本が100億円(1株当たり27万8000円、自社株を除くと1株当たり36万5000円)もあるのに、その時点での株価は15万円くらいでした。また現金同党物も41億円もありました。買付価格の22万円と言うのは、当時の時価に比べると、50%程高いのですが、それでも財務内容から比べれば非常に安いといえます。

  つまり、MBOの理由は、少数株主の監視を避けて思い切った経営をしたい、という表向きの理由のほかに、最近の上場会社としての、いろんなコストに比べて、株式市場での評価があまりにも低く、上場している意味が全くないということになり、経営に自信がある経営者ほど同じように考えるのだと思います。これではますます株式市場の存在意義がなくなっていくことになります。

  もうひとつ、確かに自社株を除いた全株取得コストは60億円ほどであり、幻冬舎の収益や財務状況からすると、非常に「お買い得」であることは確かです。上場時の株主構成とか、売り出しの株数などを見てみなければわかりませんが、多分この創業者にとってみれば、過去のどの時点よりも安く幻冬舎全体を手に入れられることになるはずです。

  しかし、過去に株式市場から資金を1円も調達せず、逆に自社株会や配当で市場に資金を返却していた幻冬舎ですから、誰も文句は言わないと思います。

  過去のMBOとかTOBを見てみると、実はとんでもない例があるのです。

 例えば、平成21年3月に米国の親会社がTOBをして全株取得し、上場廃止になった「日本トイザらス」です。上場時に156億円の資金を公募増資で調達しています。同時にかなりの額の売り出しも行ったはずです。当時の株価は4000~5000円台でした。

  それが、TOBを1株=587円で行い、全株取得にかけた資金がわずか56億円で、親会社がそっくり買い戻していったのです。これは完全な「食い逃げ」で、日本の株式市場から資金を持ち去ったことになるのです。

  他にもそういった例が結構あるので、今度まとめてご紹介しようと思います。