「アイルランド」と「アイスランド」  その1

 ここ数日、アイルランド危機が騒がれていますので、ユーロの先行きについてもちょっと掘り下げて考えてみたいと思います。また長くなりそうなので2日に分けて書きます。

 なぜ「アイスランド」が出てくるのか? 「アイスランド」はユーロ構成国でもなく、欧州連合(EU)加盟国でもありません。しかし、現在起こっている「アイルランド」の危機とそっくり同じことが2年前に「アイスランド」で起こったので、まず、これについて書いてみます。

 大事なことなので繰り返しておきますと、「アイルランド」はユーロ構成国ですが、「アイスランド」は違うということです。

 「アイスランド」は地球で最もマグマに近いところにある国だと言われています。数多くの活火山や温泉があり、今年の4月に氷河の下の火山が爆発し、舞い上がった噴煙で航空機の運航に大規模な支障が出たことは皆さんの記憶に新しいと思います。

 もともと無人島だったのですが、9世紀ごろノルマン人(バイキング)やケルト人が移住して住み着いたようです。ちなみにノルマン人は字の通りノルウェーから、ケルト人はスコットランドやアイルランドから移住していきました。だから「アイスランド」も「アイルランド」も人種的には似通っていることになります。

 クイズ番組的に言うと、「アイスランド」は930年に世界で最も古い民主議会「アルシング」が開催された国です。一時デンマークの主権下にいたのですが、1944年に独立しました。戦後は冷戦下の重要ポイントとして米軍の空軍基地がありましたが、今はありません。面積は約10万平方キロ(北海道と四国を合わせたくらい。アイルランドより広い)で人口は32万人しかいません。

 さて、この地の果てにあり、漁業くらいしか産業のなかったアイスランドですが、1990年代ころから銀行立国を目指したのでした。たぶんスイスやルクセンブルグの真似をしようとしたのです。

 もともと公定歩合が12%くらいだったので、ユーロ発足で金利が下がったユーロ加盟国(具体的に言うと英国とオランダ)から高い金利を求めてアイスランドの銀行に預金が殺到しました。もともと国内に優良な貸付先などあるはずがないため、アイスランドの銀行はその有り余る預金を、海外の不動産や株式投資に振り向けました。もちろん一部はアイスランドの狭い不動産市場にも向かったので、あっという間にバブルになりました。

 アイスランドの銀行の総資産はGDP(200億ドルくらい)の10倍にもなりました。もちろん大半は海外からの預金と海外への投資残高でした。ただ、一時はユーロ圏だけでなく世界の経済が活発で資産価格が上昇したため、アイスランドの銀行の資産内容は非常によく見え、結果アイスランド経済も非常に好調で、一人当たりGDPルクセンブルグと並ぶ世界最高水準となっていました。

 ところが、リーマンショックで世界の株式や不動産が暴落し、海外からの預金の引き上げが殺到し、あっという間に身動きが取れなくなってしまいました。アイスランド中央銀行は国内の三大銀行を政府管理下に置きましたが、全くのデフォルト状態でした。

 国内最大のカウプシング銀行は、円建て債を日本で780億円も出していましたがデフォルトしました。(一つの銀行の社債をその国のGDPの約4%も引き受けるというのも異常な話です。日本で一社が20兆円も社債を出したら買いますか?)

 預金も凍結となりました。問題は海外(特に英国とオランダ)の預金者です。英国政府は「反テロ」法を発動してまで、アイスランドの英国内の資産を差し押さえようとしました。

 アイスランドは2ケタの高金利国だったので、キャリートレードの資金もかなり入っていたようです。これが一気に引き上げられたので、アイスランド・クローネはあっという間に半値以下になってしまいました。

 これがアイスランド金融危機のあらましなのですが、現在起こっているアイルランド危機は、ユーロの構成国である「アイルランド」が、法人税率を12.5%と低くして、ユーロ圏内から投資資金を集め、その結果アイルランド国内で不動産バブルなどが発生し、銀行の経営危機が起こったということで、アイスランドのケースと少しだけ違うものの、ほとんど同じような構造なのです。

 ただ問題は、アイルランドはユーロ構成国なので、為替調整による対策が取れないことと、ユーロそのものの信認維持のために各国の思惑が違うことなどです。

 その辺のことは明日書きます。