シングルBの衝撃  東京電力とギリシャ

 5月30日に米国格付け機関のStandard and Poor’sが東京電力の企業信用格付けをBBBから5段階引き下げてB+にしました。企業信用格付けと言うのは、無担保の貸し付けなどを対象にした格付けです。

 一方、東京電力の社債に適応される長期債格付けは、同じBBBから2段階引き下げてBB+になりました。

 東京電力のいずれの格付けも3月11日の東日本大震災前には、確かAAマイナスだったので、僅か2ヶ月で10段階もの格下げとなったのです。

 米国格付け機関は、発行体の将来の信用に関して、投資家が認識する前に有益な警告を与えるような格付けの変更をすることは全くなく、事態がはっきりと悪くなった後でヒステリックに格下げを繰り返し、ますます事態を混乱させることを業務としています。

 まさに今回もその通りに変更しているのですが、今回はちょっと影響が大きそうです。

 まず、企業信用格付けというのは、銀行借り入れなど間接金融で使われる格付けなのですが、それがシングルB格になったということは、東京電力に貸付のある銀行は全て引き当てをしなければなりません。

 さらに、新規の貸し付けが出来ないことになります。担保を付けたとしてもBB格なので、あまり変わりません。そして、新規の貸し付けが出来ないだけでなく、一刻も早く回収をしなければならないのです。

 金融庁の決めたルール通りにやると、こうなるのです。さて、どうするのでしょう?

 それから社債の格付けである長期債格付けもBB格になったということは、投資適格債から外れたということで、機関投資家は保有できません。

 これも、新規に購入が出来なくなるだけでなく、保有分を売却しなければなりません。

 つまり、東京電力は今後の資金調達に際し、銀行借り入れも社債発行も実質出来なくなったのです。

 これで東京電力は、いずれ法的整理に追い込まれることは確定的になったと思います。あとは時間と政府の認識だけの問題です。

 いつも思うのですが、純粋の民間会社である米国格付け機関が、決して納得できる仕事をしていないのにもかかわらず、その格付けを絶対視するので、こういうことが起こってしまうのです。

 話は変わりますが、ギリシャの格付けも昨年のはじめころはAプラスだったのが、現在はBです。これも10段階もの格下げです。

 シングルBの格付けの国家というのは実質破綻しており、間もなくデフォルト(債務不履行)しますよ、という意味なのです。

 そのシングルB格のギリシャが、ユーロにとどまり、ユーロ各国からの支援を受け、ユーロ建ての国債を発行し、債務の減免なしで再建することが絶対できないと言うことなのです。

 純粋の民間企業である米国格付け機関が、日本を代表する企業であり、関東地方の電力の供給を独占的に行っている東京電力と、ユーロの枠組みの中に組み込まれているギリシャを、ともにシングルB格にしたということは、東京電力を法的整理に追い込んで日本経済を更なる低迷に追い込み、ギリシャを国家破綻に追い込んでユーロを大混乱させることなのです。

 米国格付け機関が、ここまで責任を持って格付けをしているとはとても思えません。

 しかし、ギリシャのことはともかく、政府は東京電力の再懸案を急いで練り直さなければ、再び膨大な国家損失が生まれてしまうのです。

 不信任案どころではないのです。