東京電力をめぐる東証社長のコメント

 昨日(6月6日)、東京電力の株価は急落し、前週末比79円安の207円となりました。他の電力株も急落しています。

 本日(6月7日)も216円と、ほとんど反発していません。時価総額は3471億円まで落ち込みました。

 その理由については。東京証券取引所の斉藤社長が「法的整理が好ましい」と言ったからだと伝えられています。

 本誌でも5月25日付け「その後の東京電力」で、救済スキームが、負担は東京電力が無限に負うとしながら、上場も維持し債務免除も行われないなら、東京電力の企業価値が誰にもわからず、株価は際限なく下がると書きました。(5月25日引け値は315円)

 また、6月1日付け「シングルBの衝撃」で、5月30日のStandard and Poor’sの格下げ(企業信用格付けをB+へ)を受けて、これは何もしないと法的整理に必ず追い込まれると書きました。(6月1日引け値は299円)

 どちらも、客観的事実を受けて東京電力の行く末を客観的に書いたもので、個人的見解を書いたわけではありませんでした。

 それに比べて、やはり東証社長の発言は効果があるなあ、と感心しました。

 その発言ですが、どの報道を見ても脈絡がはっきりとしないのですが、多少好意的に考えると、「国・株主・銀行・他の電力会社・電力使用者すべてに公平に負担をしてもらうためには、法的整理をして手続きを踏まなければならない」というごく常識論を述べただけだと思われます。

 巷間ささやかれている救済スキームのように、なんとなく負担を免れる者がいる中途半端なものではいけないという意味で、きわめて正論だと思います。

 しかし、学者の意見としては正しいのですが、東証社長として株式市場の地位向上に責任のある立場の人の発言としては、大いに不満です。

 まず、東京電力の救済スキームに関しては、単に損失を誰が負担するかというマイナスの分配の話ではなく、株式市場を通じて近い将来に果実を得られるスキームづくりを提案すべきなのです。

 昨年11月22日付け「GM再上場とJAL再建策 その1

 同11月24日付け「GM再上場とJAL再建策 その2

 に書いてあるのですが、米国は政府でも債権者として株式を受け取り、株式市場で回収しているのです。

 日本はJALの例だけでなく、こういった方法は過去にもまったくありません。いつまでたっても株式市場は「怪しい輩」がうろうろしているところとしか考えられず、国民の健全な資産形成の場とは認められていないからなのです。

  東京電力は、電力事業そのものは地域独占で必ず利益が出るため、上場廃止にするのではなく、エクイティ出資や債務の株式化など、株式市場を通じて再生する方法に挑戦する絶好のケースなのです。

 それが、株式市場の地位向上の絶好のチャンスであり、かつ経済的にも非常に効果が上がる方法なのです。

 東京電力は、損失額を厳格に算定して開示し、再建計画をしっかり出し、不足することになる自己資本を算定し、エクイティ出資と債務の株式化をお願いし、回収スキームをしっかりと提示すればよいのです。

 政府に対しても、交付国債を貰って使ってしまうだけではなく、優先株などの出資をお願いし、回収スキームを提示すればよいのです。

 東京電力はJALとは違い、海外企業などと競争する必要もなく、絶対利益の上がる地域独占企業なのですから自信を持ってお願いすればよいのです。

 そして斉藤社長は、東証と言うより日本の株式市場を代表する立場から、これを全面的に協力すると声高に言えばよいのです。自分が全て考え出したと言いたければ言えば良いのです。

 次の日から株価は上昇するはずです。これなら誰も(これ以上という意味ですが)マイナスがありません。

 繰り返しですが、東証社長というのは株式市場の活性化と信頼向上が最大の責務なのです。