中国の外貨準備・日本の外貨準備

 中国と日本の外貨準備を比較して考えてみたいと思います。

 まず、中国が預金準備率を引き上げました。本年になって6回目、引き締めを開始した2010年はじめから9回目の引き上げで、21.5%になりました。

 もちろんインフレを警戒するためですが、そのインフレも5月発表のCPIが前年同月比5.5%の上昇で、特に農村部のほうが6.0%と上昇幅が大きく、民衆の不満が急増しているようです。

 中国については6月7日付け「中国の中国の世界制覇戦略」で書きましたとおり、人民元を明らかに割安水準に維持し貿易黒字を貯め込み、また世界からの将来の人民元の値上がりや高成長を期待した投資資金を集め、流入した外貨をすべて人民銀行(中央銀行)が買い上げ、見返りの膨大な人民元を市中に放出して国内経済を発展させているのです。

 その結果、外貨準備が3兆ドルを越え、見返りで市中に放出された人民元が、脆弱だった国内の資本基盤をあっという間に強化してしまったのです。

 もちろん弊害もあり、国内のインフレと、将来の外貨準備の評価損です。

 中国としては急激な元高も容認できず、かといって外貨準備が増えないようにして(つまり外貨が流入しないようにして)国内のマネーを調節することもできないため、基本的には金融政策の引き締めを続ける以外に方法がないようです。

 さらに、流入する外貨を政府(中央銀行)が一元管理することにより、本来は民間が負うべき将来の外貨安による評価損を、全て政府が引き受けて民間を保護していると言えるのです。

 つまり、国内のインフレも、将来の外貨準備の評価損も、全て外貨を積極的に流入させて国内の資本基盤を拡充させるためのコストなのです。3兆ドルの外貨準備は、そのコストを補って余りある効果を中国経済にもたらしたのです。

 もちろん、この巨額の外貨準備を使って対米国や、対世界への発言力を向上させていると言う副次的な効果もあります。

 一方、日本も本年4月末時点で1兆1355億ドルの外貨準備があり、中国に抜かれたとはいえ世界第2位です。

 しかし、日本の外貨準備は大半が為替相場の安定(つまりドルの買い支え)を目的として積み上がったものです。

 1兆ドル以上積み上げて、果たして為替相場が安定したのかという議論は止めますが、少なくとも歴史的に日本経済の底上げになるような為替相場の維持に役立った(つまり輸出による経済発展が必要な時に円安を維持した)とか、民間の円高による損失を食い止めるのに役立った、という印象は全くありません。

 ましては、積み上がったドル資産を通じて、米国に政治的圧力をかけたことがあるかと言うと、これもありません。

 1997年に時の橋本首相が、つい「米国債を売りたいと思ったことがある」と本音を言って米国株の暴落を引き起こしてから、誰も米国に気を使って何も言えないのです。

 日本の外為特別会計の内訳は、2011年4月末現在1兆1355億ドル(92兆円)で、そのうちの約7割がドルです。金は3.3%です。

 一方、その外為特別会計は112兆円の短期証券を出して、この外貨準備をファイナンスしています。

 1952年以降累積の運用益(主に金利収入)は52兆円に上りますが、そのうち31.5兆円がすでに一般会計に繰り入れられて使われてしまっています。

 残りの運用益は20.6兆円なのですが、2011年2月末現在(ドルが81.76円)で35.9兆円の評価損が発生しており、差し引き15.3兆円の累積損失になっています。

 外貨準備と言うのは、あくまでも政府が円を調達して(短期国債を発行して)外貨を保有すると言うもので、その目的が「政府がキャリートレードをして大儲けする」でも、「徹底的に円安にして輸出主導で日本経済を再生する」でも、「ドル債を大量保有して米国の首根っこを抑える」でも、「政府ファンドを作って、世界中の優良企業や資源会社を買い占める」でも何でも良いので、国民が納得できる外貨準備のあり方を考えるべきなのです。

 のほほんと積み上げて、目に見えた効果もなく、累積損失まで出ているとなったら、全く意味がないのです。