ユーロの行方・ヨーロッパの歴史 その4

 先回は、カール大帝の死後フランク王国が3つに分裂したところまで書きましたが、それぞれを少し詳しく見てみましょう。

 中部フランクは今のイタリアですが、すぐにカロリング家が断絶してしまい国家的統一はなくなります。北部にはベニスやジェノアなどの自由都市が発達し、中部にはローマ教皇領、南部とシチリア島はイスラム勢力に支配される分裂状態が続きます。

 イタリアがサルディニア王国によって統一されるのは1861年のことです。

  民族的にも、元々ラテン人の地域でフランク族も間もなく同化してしまうので、イタリアはゲルマン人の国ではなく、結局ローマ帝国時代からのラテン人の国と言うことになります。

 東フランク帝国は今のドイツですが、10世紀初めにはカロリング家が断絶し、有力諸侯から選挙によって王が選ばれるようになります。10世紀にはローマ教皇がオットー1世にもローマ皇帝の冠を授けます。

 最初に冠を授けたカール大帝フランク王国が分裂してしまっているからなのですが、ちょっと安直すぎる気がします。これにより以後ドイツは神聖ローマ帝国と呼ばれ、これまた1866年にプロイセン王国に統一されるまで存続します。

 ただ東フランク帝国は、民族的には唯一ゲルマン人のアイデンティティを残して現在に至っています。

 西フランクは今のフランスです。ここでも10世紀後半にはカロリング家が途絶え、有力諸侯の中から王が選ばれるようになります。ユーグ・カペーが987年にカペー朝を興しますが、カペー家もパリ周辺を治めているだけの諸侯の一人でした。

 しかしカペー家は、その後分家のブルボン家も含めて、フランス革命を挟んで19世紀まで続くフランス王室を独占していくのです。

 民族的にフランスは、ゲルマン人がラテン人や先住民族のケルト人などと混血し、ゲルマン人でもなくラテン人でもない独特のアイデンティティをもったフランス人となっていきます。

 つまり、今のドイツ・フランス・イタリアはもともとゲルマン人フランク王国から分裂したのですが、民族的には違ってくることになります。

 ゲルマン人で、フランク人と並んで重要なのがノルマン人(バイキング)です。

 ノルマン人(バイキング)は、今のノルウェー・スェーデン・デンマークの沿岸部に住んでいました。他のゲルマン人の移動が落ち着いた9世紀ころから船に乗って移動を始めます。だからバイキングは「海賊」の代名詞なのです。移動を始めた理由は、他のゲルマン人と同じく人口増加による食料の不足だったようです。

 そして911年に、フランス北海岸のノルマンジー地方に上陸しノルマンジー公国を建てます。国王はロロ(ろろ)といい、まあ海賊の親玉だったのでしょう。

 当時のフランスは、フランク王国が分裂した直後で、カロリング家の王がまだ居たのですが武力的に強くありません。そこで強そうなノルマン人にノルマンジー地方を与え、ロロをフランス王の臣下のノルマンジー公とする取引をしたのです。

 原住地にとどまったノルマン人は、ノルェー・スェーデン・デンマークを建国します。だからこの3国は、いまでも共同でスカンジナビア航空SAS)を運行するなど親密なのです。偶然かも知れませんが、この3国はいまだにユーロ構成国ではありません。ノルウェーに至ってはEU(欧州連合)にも加盟していません。

 フィンランドフン族が建てた国と言われ、近隣ですがこの3国とは民族・言語が違います。そしてユーロ開始以来の構成国です。また最近ユーロ構成国になったエストニアも民族・言語がフィンランドに近いそうです。

 さて、ここからが重要なのですが、今のイギリスにはゲルマン人のアングロ族・サクソン族が王国をつくっていたのですが、11世紀に入りノルェー・スェーデン・デンマークの王を兼ねるクヌート王(もちろんこの人もノルマン人)が一時占領しイギリス王も兼ねます。

 そこへ、1066年にノルマンジー公ウイリアムがイギリスを征服しノルマン朝を建てます。

 ウイリアムはもちろん海賊の親玉ロロの子孫で、ウイリアム征服王と言われ現在まで続くイギリス王室の始祖です。(イギリス王室は海賊の子孫なのです!)-

 しかし、ここでイギリスとフランスの関係がいっぺんにややこしくなります。

 つまりイギリス国王となったノルマンジー公ウイリアムは、実際はフランス王の臣下であり、フランス国内にあるノルマンジー公国はイギリス領ということになるのです。

 さらに、その後イギリス王にフランスの王位継承権があったりして「ねじれ現象」が続き、100年戦争(1339年~1453年)の原因となっていきます。

 現在でもイギリスとフランスの関係が割合微妙なのは、この辺の影響もあると思います。

 ここまで書いてもまだ、スペインもポルトガルもアイルランドもオランダも出てきません。でも書いているうちに私の頭もだいぶ整理出来てきましたので、もう少しこのシリーズを続けることにします。