危機的水準の米国国債利回り

 表題の意味を取り違えないでください。

 格下げで米国国債市場が危機的な状況になっているのではなく、全く逆で、世界経済の危機的状況を示す水準まで米国国債の利回りが低下(価格は上昇)しているのです。

 昨日(8月9日)のFOMCで、経済の下振れリスクが高まったとして、現在の異例の低金利(FF金利で0.00~0.25%)を2013年半ばまで維持すると発表しました。一方、新たな資産購入などの量的緩和の導入は見送られましたが、現在FRBが保有する国債などの資産の残高を維持し(償還分も国債で再投資する)、必要であるなら追加的措置を適切に実施するとしています。

 これを受けて米国10年国債の利回りが一時2.03%と、2008年12月のリーマンショック後の最低水準に並びました(引けは2.18%)。

 つまり市場は、財政赤字の増大や米国国債の格下げを問題としているのではなく、リーマンショック後にも匹敵する経済危機であることを示しているのです。

 今回のFOMCで目新しいのは、現在のほぼゼロ金利を2013年半ばまで、つまりあと2年間維持すると発表したことです。これを受けて米国2年国債の利回りが、一時0.15%と史上最低利回りとなり(引けは0.17%)、日本の2年国債の0.13%とほぼ並んでいます。

 しかし米国は、ほぼゼロ金利があと2年続くのですから、米国2年国債の利回りは0.1%でも採算が合うわけで、たぶんその辺まで下がり日米2年国債利回りの逆転があると思われます。これは、もちろん新たな円高要因です。

 本誌で何度か書いたのですが、米国10年国債利回りは、米国経済を含む世界経済の見通しを強く反映します。現在はリーマンショック後の経済危機時点に並ぶ低利回りとなっており、それくらいの経済危機状態であることを市場は暗示しているのです。

 これは経験的に、どの経済学者の予想よりも頼りになるのです。

 たとえば、リーマンショック後の2009年3月から2010年10月まで、FRBが1兆7500億ドルものモーゲージ関連債券を市場から購入しました。いわゆるQE1で、購入したのは国債ではなかったのですがこれだけモーゲージ関連債券が市場から吸い上げられたので、国債の需給も格段に良くなったはずです(余談ですが、このモーゲージ関連債券もAA+に格下げされています)。

 ところがその間、米国10年国債の利回りは2.1%から4.0%まで上昇したのです。これはQE1により米国経済を含む世界経済の見通しが改善したため、それを反映して米国10年国債の利回りが上昇したのです。

 ところが、2010年4月にQE1が終了しますと、ギリシャ問題などもあって世界経済が再び低迷し始め、それを受けて米国10年国債利回りも2.4%まで低下しました。

 そこで2010年11月から、FEBによる6000億ドルの国債購入が始まりました。いわゆるQE2で、QE1で購入したモーゲージ関連債券の償還分も国債で再投資するため、合計9000億ドルもの国債を市場から購入することにしたのです。

 それをうけて世界経済の見通しが再び改善し、それを反映して米国10年国債利回りは2011年2月に3.6%まで上昇しました。

 ところが2011年6月にQE2を予定通りに終了することが発表されたあたりから、再び世界経済が低迷し始め、つれて米国10年国債利回りも低下をつづけ、そこへユーロ市場の財政問題や米国国債の格下げの追い打ちもあり2.1%台まで低下してしまったのです。

 つまり、FRBが国債を購入する金融量的緩和を行っている間は、米国を含む世界経済の見通しも改善して米国10年国債利回りは上昇し、量的緩和が終わってしまうと世界経済の見通しも悪化して米国10年国債利回りが低下するという、需給関係からすると矛盾することが起こるのです。 

 5月13日付け「下がり始めた米国長期金利は要注意のシグナル」をご参照ください。

 もう一つ、日本株が一番きれいに連動しているのも米国10年国債利回りなのです。これは1月31日付け「日本株はどうなる」に詳しく書いてありますので、繰り返しませんので読み返してみてください。

 もちろん米国10年国債の利回りが低下すると、日本株が下落するのです。現在の米国10年国債利回りの2.1%台は、リーマンショック後と同水準で、その時の日経平均は7000円なのです。

 繰り返しますが、米国10年国債利回りは、米国や日本を含む世界経済の状況がリーマンショックを引き起こした経済危機時点に匹敵することを暗示しているのです。

 これは経験的に、どの経済予測よりも信頼できるのです。