スイスフランの変調

 円と並んで、というより円以上の最強通貨であったスイスフランが突然下落し始めています。

 8月9日に、1ドル=0.706スイスフラン、1ユーロ=1.01スイスフラン、1スイスフラン=108.50円のそれぞれ史上最高値を付けたのですが、本日(8月12日)・NY時間の終値は、1ドル=0.778スイスフラン、1ユーロ=1.1084ユーロ、1スイスフラン=98.52円と、4日間でそれぞれ10%前後の急落となりました。

 尤も、本年の初めころは1ドル=1スイスフラン、1ユーロ=1.3スイスフラン、1スイスフラン=86円くらいだったので、それでもまだかなりスイスフラン高の水準です。

 スイス中央銀行が先週、基準金利をゼロ近辺まで下げ、8月10日に中央銀行預金残高(日本で言う日銀当座預金)を1200億スイスフラン(12兆円。日本は40兆円くらい)まで拡大したのですが、何といっても直接のきっかけになったのは、スイスフランをユーロに連動させるとのうわさが流れたことです。

 実際、スイスはEUに加盟しておらず、従ってユーロ構成国になることは当面不可能なので、具体的には介入などを通じて水準をユーロに連動させるということのようなのですが、あまり実現性のある方法だとは言えません。

 介入と言えば、スイスは2009年後半から2010年にかけて1ユーロ=1.5スイスフランを割り込んだあたりから積極的に介入したのですが、全く効果が無く巨額の損失(現在の水準では2~3兆円)を被ったのです。

 しかし、今回はスイスフランが反応して急落したのです。

 ここから、2つ重要なことが言えます。

 1つ目は、これで「円」が最強通貨になり、唯一の「安全通貨」「逃避先通貨」となったことです。

 だからこの間に、「円の基軸通貨化」と「円建て国債の発行」を急がなければならないのですが、何度も言ってきたことなのでここでは省略します。

 8月7日付け号外版「米国国債格下げへの対処

 8月10日付け「世界の混乱の本質と日本の進むべき方向」をご参照ください。

 2つ目は、世界の資金の流れは突然、理由もなく変わることが時々あります。

 今回のスイスフランのように、つい数日前まで何の疑いもなく世界中で買われていた資産が、突然はっきりとした理由もなく急落することがあるのです。

 つまり、今までどんなニュースが出ても買われていたものが、突然どんなニュースに対しても売られることが時々あるのです。当然それまで、世界中が安心して買っていたので、その反動は非常に大きくなります。

 突然ですが、「金」はどうなのでしょうか?

 あまり論理的な説明ではないのですが、例えばやはり世界中で買われている「円」とか「米国国債」は、まだまだ懐疑的な見方も多く、決して心から安心して買われている状態とは言えません・

 こういう時は、長続きするものなのです。

 しかし「金」については、どこにも「懸念材料」がないと考えられ、世界中で心から安心して買われています。いま、金が近い将来に急落するなどと考えている人間は一人もいませんし、私もそう考えているわけでは決してありません。

 しかし、こういう時こそ慎重に考えてみる必要があるのです。