2012年の米国大統領選挙  その2

 前回の続きです。

 もともと米国大統領の任期は、初代ワシントンが2期8年で引退したため、慣習的に2期までとなっていたのですが、32代フランクリン・ルーズベルトが4期も務めたため(4期目途中で死亡)、その後正式に修正憲法で2期までと決められました。

 2012年の選挙のポイントは、もちろん現職のオバマ大統領が再選できるかどうかなのですが、歴史的にみて現職大統領が再選される可能性はどれくらいなのでしょう?

 オバマを除いた過去42人の大統領のうち、再選されたのは16人です。つまり大統領選で2回勝った大統領のことで、4回勝ったフランクリン・ルーズベルト、1期空けて再選されたクリーブランド、2期目の途中で暗殺されたリンカーンとマッキンリー、同じく2期目の途中で辞任したニクソンを含みます。

 しかし、大統領の死亡などで副大統領から昇格した大統領が、もう1回大統領選で勝ったケースを入れると(副大統領候補として大統領選に勝っているので、2回勝ったことになります)、あと4人います。

 26代セオドア・ルーズベルト、30代カルビン・クーリッジ、33代ハリー・トルーマン、36代リンドン・ジョンソンです。

 この4人を入れると、過去42人の大統領のうち20人が再選されていることになり、大統領の再選率はほぼ5割ということになります。

 残り22人が再選されなかった大統領ですが、再選を狙った大統領選で敗れたり、1期目の途中で死亡したり、自ら再選を辞退したケースなどです。なかには14代フランクリン・ピアースのように、望みながら2期目の大統領選の候補になれなかった可哀そうなケースもあります。

 前回(8月12日付け)で、オバマ大統領が早くも次期大統領選の出馬を発表したと書いているのですが、実は、現職大統領が何の権利で次期大統領候補に無競争でなれるのかはよくわかりません。たぶん慣習なのでしょう。

 大統領が一時的に職務を遂行できない状態に陥った時に、大統領代行が選任されることがあります。実際には40代ロナルド・レーガンと43代ジョージ・ブッシュ(息子の方)が全身麻酔をして手術を受けた時に、それぞれ副大統領が数時間の大統領代行となっています。その間に米国が核攻撃を受けたら困るからですが、大統領代行は宣誓をせず、大統領とは明確に区別されています。

  しかし、過去こんなことがありました。

 28代ウッドロウ・ウイルソンは、2期目の終盤に健康を害し、全く人前に姿を見せなくなりました。しかしイーディス夫人を含むごく少数の側近が辞任や大統領代行を拒み、すべての決裁書類をウイルソンが「病室でサインした」ことになっているのですが、その現場は誰も見ていませんでした。

 その間、大統領権限は誰の手にあったのでしょうか? 1920年ころの怖い話です。

 歴史的には、副大統領以外が大統領代行になったケースが1度だけあります。

 1849年3月4日正午に11代ジェームス・ポークの任期が終了したのですが、12代大統領に選ばれていたザカリー・テイラーが、当日が日曜日で安息日であったため宣誓を翌日に延ばしたので、1日の空白ができてしまいました。

 もちろん副大統領の任期も終了していたので、上院仮議長だったディーン・アチソンが1日だけ大統領代行となりました。アチソンはその日、1度も外出しなかったそうです。

 アチソンの墓には「1日だけの大統領」と書かれているそうですが、もちろん正しくは「1日だけの大統領代行」です。

 12代大統領となったザカリー・テイラーの方は就任1年半で病死してしまい、今度は代行ではなく、本当に大統領職を副大統領のミラード・フィルモアに譲りました。

 フィルモアは日本にペリーを派遣した大統領です。

  見てきましたように、最近かなり修正されてきているとはいえ、大統領の身分に関する規定(普通は憲法です)には、かなり抜け道とか盲点があるのです。

  例えば、現在大統領は三選が禁じられているのですが、2期大統領を務めた後、副大統領になることは禁止されていません。もし副大統領になってその時の大統領に万一のことがあれば、もう1回大統領になるのです。

  また、死亡以外に大統領が職務を遂行できない状態になった時、だれがその認定を行うかもはっきりしません。

 ハリソン・フォード主演の「エアフォース・ワン」には、大統領専用機がテロリストにハイジャックされ大統領が人質になった時、大統領権限はどうなるのかを憲法学者に聞くシーンがあります。

 結局、米国の最高権力者である大統領の地位をとやかく規定することは適当でなく、慣習と良識に任せると言うことなのだと思います。

  日本の首相は良識に任せておいたら、とんでもないことになるのですがね。

  次回はこのシリーズの最終回で、米国大統領の権限と、早いですが2012年の大統領選の個人的予想を書きます。