2012年の米国大統領選挙  その3

 ちょうど共和党の大統領候補選びがアイオワ州の討論会と模擬投票でスタートしました。それも含めた2012年の米国大統領選挙の予想をする前に、もう少し米国大統領について書いてみます。

 米国大統領は行政の最高責任者で、立法を行う議会(上下院)とは明確に区別されており、お互いに干渉できないようになっています。

 米国大統領(副大統領も)は議員ではないため、議案提出権も議会出席権もありません。副大統領は上院議長も兼ねるのですが、普通は議場に入れず、あくまでも上院の評決が同数になったときのみ投票権があります。副大統領が上院議長席に着くのは年初の「一般教書演説」(後述)の時だけですが、このときは上院議場が狭すぎるので下院議場で下院議長と並んで座ります(実際は全員が立って拍手をしながら聞きます)。

 米国大統領は行政の最高責任者として、各省長官、大使、連邦判事をはじめ、FBI長官、CIA長官、FRB理事などすべての連邦公務員の任命権があります(当然罷免権もあります)。ただし、これらはすべて上院(のみ)の3分の2以上の賛成による承認が必要です。

 また条約締結権もありますが、これも上院の承認が必要です。

 米国大統領には議案提出権がありません。その代り年一回(普通1月下旬)、法律制定その他の適切と考える施策を議会に対して勧告することができます。それが、一般教書、予算教書、特別教書(おもに戦争に関するもの)です。

 また、大統領は両院議会が承認した法案の拒否権があります。この場合両院は3分の2以上の賛成で再可決することができます。

 歴史上、最多の拒否権を発動したのが32代フランクリン・ルーズベルトで、12年間(4期目に入ってすぐに死亡)で653回も発動しています。先代のジョージ・ブッシュは3回で、オバマはまだないはずです。

 先ほど、大統領と議会はお互いに干渉できないと書きましたが、唯一の例外が大統領弾劾です。これは大統領として不適当で罷免すべきという弾劾訴追決議を下院が行い、上院が弾劾裁判所となります。このときは上院議長ではなく連邦最高裁長官が主宰し、訴追決議をした下院の代表が検察官となり、上院議員全員が陪審員となります。

 大統領罷免には陪審員(上院議員)の3分の2以上の賛成が必要です。

 過去、実際に弾劾裁判が行われたのは、17代アンドリュー・ジョンソンと42代ビル・クリントンの2回だけで、実際に罷免されたケースはありません。

 37代リチャード・ニクソンは下院の弾劾訴追決議の直前に辞任しています。

 もう一つ、米国大統領は米国国軍の最高司令官としての指揮権があります。

 宣戦布告は議会の権限なのですが、実際はそんな悠長なことを待っていられないため、大統領が最高司令官としての指揮権で宣戦布告することができるようです。また核兵器使用権限も大統領(のみ)にあります。

 それでは、2012年大統領選挙の行方はどうなのでしょう?

 結論から言いますと、現在の米国は急速に保守化しており、対内的にも対外的にも「強硬な」大統領が望まれます。

 もちろん財政再建が重要テーマなのですが、増税が難しいため、結局弱者の切り捨てを断行できる大統領が必要となります。

 したがって、オバマの再選は難しく、共和党に政権が戻ると思われます。

 しかし、共和党も絶対といわれる候補者が絞り切れていないため、今後の展開が重要です。ちょっとした情勢の変化によって趨勢が変わってしまうのです。

 その中で、あえて有力候補者を絞りますと、出馬宣言をしたばかりのペリー・テキサス州知事だと思います。Tea Partyは、やや人気先行のようで、具体的な政策論争になると問題が出ると思います。

 ロムニー・元マサセーシュッツ知事は、中道派であり、また米国では決して多数から支持されているわけではないモルモン教徒でもあり、最終的に大統領候補に選ばれるのは難しいと思われます。

 ペリー候補は、ブッシュ前大統領と同じキリスト教福音派(基本的に米国最大のプロテスタント)で、集票力も折り紙つきです。

 今後を注目しましょう。