世界大不況の入口

 先週のNY株式は、バーナンキ講演をうけた追加金融緩和への期待から比較的堅調だったのですが、週末(9月2日)の雇用統計で253ドルの急落となってしまいました。

 やはり米国経済は、全然回復していないようです。それに、本年の米国成長率予想も2.7%から1.7%へ引き下げられています。

 一方、ユーロ圏では相変わらず域内の財政危機問題がくすぶり、成長の足を引っ張っています。

 また先週は、ブラジルが2年ぶりの利下げを行ったり、中国に輸出減速懸念が出てきたりで、今まで好調だった新興国経済にもブレーキがかかっているようです。

 先進国経済が不振となると、新興国経済や資源国経済だけが好調を維持できるはずがなく、むしろこれから急激に減速していくものと思われます。

 世界的にみて株式や不動産などのリスク資産、新興国や資源国の株式や通貨などは実態に比べてままだまだ割高のように思えます。近々、もっと大きな調整がありそうです。

 従って日本の投資家が買いこんでいる、米国REIT、米国ハイイールド、ブラジル、豪州などに集中投資する投資信託は、ますます危なく見えてきます。

 つまり現在は、先進国(この呼び方が正しいのかどうか分かりませんが、米国・ユーロ圏・日本のことです)経済がすべて下落を続け、その影響が新興国経済や資源価格に波及しそうになっている段階なのです。

 まさに世界大不況の入口なのです。

 先進国の現状をそれぞれ見てみましょう。

 まず、ユーロですが、やはりどうしても現在のユーロの枠組みに固執するようです。

 つまり、域内の財政問題を抱える国をとにかく支援し、現状の「世界通貨」としてのユーロへの域内外からの「信用」を維持しようとしているのです。

 問題国を切り離すなどでユーロの価値そのもの毀損を防ぐ方法は考えていないようです。

 こうなると、経済回復のためにとれる方法は、ユーロ全体の価値を引き下げてユーロ圏以外との貿易を拡大して成長していくしかなさそうです。

 つまり、ユーロも先安観が出てくるはずです。

 米国でも、先週末(9月2日)の米国10年国債の利回りは再び2%を割り込み1.99%となっています。

 これは何度も書いているのですが米国経済の危機的状況を暗示しており、とにかく何らかの金融量的緩和を行い、まず市場心理を改善させて株式市場を回復させなければ、まさに米国経済が沈没してしまうとこになるのです。

 8月11日付け「危機的水準の米国国債利回り

 8月25日付け「バーナンキ講演の注目点

 9月2日付け「米国債券王・グロス氏の敗北宣言の意味するもの」をご参照ください。

 しかし、米国も来年の大統領選挙を控え、特に野党共和党の金融の量的緩和に対する批判が強いのですが、根底にあるのは量的緩和が世界的にインフレを引き起こすということのようです。

 しかしよく考えると、世界経済が不振の中で資源価格だけが上昇を続けることは考えにくく、世界的な雇用不安の中で賃金が上昇するとも思えず、中国などの新興国経済がこれ以上加熱して世界的なインフレを引き起こすということも考えにくいのです。

 つまり、世界経済が不振のなかでインフレが起こるはずがないのです。

 だから、米国は9月20日・21日のFOMCで何らかの金融量的緩和に踏み込むべきなのです。

 同時に、財政政策の方でも、さすがに米国も財政再建をしなければならないのですが、投資・雇用・消費を促進するための減税は検討されているようです。過去レーガン政権、クリントン政権で行われて成功した方法です。

 日本では、野田新首相のもとで閣僚の顔ぶれも決まったのですが、相変わらず官僚の言いなりの財政再建・増税路線に突入しそうです。

 ここから出てくる答えは、一層の「円高」と一層の日本経済の低迷なのです。

 つまり、米国が量的緩和に踏み込めば新たに「円高」になり、踏み込まなければ米国経済が一層の不振となりこれまた「円高」になるのです。

 見てきたように、対ユーロでも「円高」が進みそうです。

 対抗するには、日本も思い切った金融量的緩和や、投資減税などを含む財政刺激などを早急に行う必要があるのですが、議論にすらならなっていないようですね。