日本銀行の怠慢・円高の根本的理由

 今週は、オバマ大統領の景気・雇用対策の発表(9月8日)や、週末のG7などのイベントが控えているのですが、実は9月7日に日本銀行の政策決定会合がありました。

 結果は、政策金利を0.0~0.1%とするゼロ金利政策を維持するとか、「資産買入等の基金」の残高を50兆円に据えおくなど、すべて現状維持の決定でした・

 金融緩和の度合いを測る日銀当座預金残高については言及がなかったのですが、現状の30兆円程度に据え置くものと思われます。

 現在の日銀の負債勘定は、銀行券が79兆円、当座預金が30兆円、それに保有国債の売り現先残高25兆円などを加えて全体が141兆円となっています。(兆円単位以下を切り捨て。以下同じ)

 一方、資産勘定は国債が86兆円(長期国債が62兆円、短期国債が20兆円など)、貸し付けが43兆円、それにCP・社債・ETF・REITの合計3兆円などを加えて、当然負債勘定と同額の141兆円となっています。

 このうち、長短国債の4兆円、貸し付けの31兆円、それにCP・社債・ETF・REITの合計3兆円を加えた38兆円が、昨年10月に導入され、その後増額されて50兆円となっている「資産買入等の基金」の内訳なのです。

 日銀の負債勘定のうちの、銀行券79兆円と当座預金残高30兆円、それに日銀の負債ではないのですが4.5兆円ある貨幣を加えた113~115兆円(当座預金残高が日々変動するため)がマネタリーベースとして、金融の緩和度合いを測る最も重要な数字なのです。

 日銀は2001年3月から2006年3月までも金融の量的緩和を行っており、当時の当座預金残高のピークも30兆円でした。その後、量的緩和が終了して当座預金残高も5~10兆円程度まで減少していたので、2008年のリーマンショックの直前から比較すると現在のマネタリーベースは20%程度の増加ということになります。

 一方、米国はリーマンショック直前のマネタリーベースは8000億ドルでしたが、2度の量的緩和の結果、現在のマネタリーベースは2.5兆ドルと3倍以上になっているのです。

 理論的には、マネタリーベースの伸びの大きな国の通貨が弱くなり、二国間の通貨はマネタリーベースの伸びに反比例するのです。

 つまりリーマンショック以降、日本のマネタリーベースの伸びが20%強で、米国のそれが3倍になっているとすれば、米国のマネタリーベースが日本のそれの2.5倍になっており、結果円がドルに比べて2.5倍になり、当時円ドルが100円程度だったので40円になるはずだという学者もいます。

 まあ、40円はともかくとしても、日本が思い切った量的緩和をためらっているから円高になる、ということは内外から指摘されているのです。

 ところが、日銀は9月7日の決定会合で追加緩和を見送ってしまいました。

 9月20日・21日のFOMCで米国の追加緩和の可能性があるため、さらなる円高要因を自ら抱え込んでしまったことになるのです。

 昨日・9月8日付け「スイス中央銀行の決断」でも書いたのですが、スイス銀行が劇的にスイスフラン高の修正にとりあえず成功したのは、その前に中央銀行預金残高(日本の日銀当座預金残高に相当)を2000億スイスフラン(18兆円)まで引き上げていたからです。

 GDPが日本の10分の1のスイスですから、日銀当座預金残高に置きなおすと180兆円もの量的緩和なのです。

 マネタリーベースは、基本的には中央銀行の負債勘定なので、中央銀行が積極的に資産購入を行い資産勘定を増加させると、結果的に負債勘定も増加してマネタリーベースが増加するのです。

 つまり、せっかく導入した「資産買入等の基金」をもっと増額しても、現在月額1兆8000億円の国債買い入れをもっと増額してもよいのです。

 しかし、ETFやREITを買い込んで安直な市況対策にすることは、はっきり言って邪道です。中央銀行の金融政策は「王道」でなければならないのです。

 米国では、FRBが二度の量的緩和で積極的に資産購入をした結果、資産勘定の国債保有残高が1.6兆ドル、モーゲージ関連残高が1兆ドルとなり、結果的に資産勘定が3倍になり、負債勘定もマネタリーベースも3倍になったのです。

 日銀が、古典的な金融政策にこだわり積極的な政策をとれないなら、「世界で最も不況の日本の通貨が世界最強」という状態が続くことになるのです。