「三菱UFJ」の「野村證券」買収

 普段あまり読んでいるわけではなく、たまに書店で立ち読みする程度の「ZAITEN」という経済誌(月刊)があります。

 その10月号に、興味がある記事が出ていたので思わず買ってしまいました。

 「三菱UFJ・永易社長‘緊急指令’野村HDを買収せよ」という題で、署名記事なのですが仮名のようで記者を特定できません。しかし久々に見た「よく書けている記事」なので、ご紹介しながら付け加えていきたいと思います。

 両社は、正式名は「三菱UFJフィナンシャルグループ」と「野村ホールディングス」なのですが、なじみのある「三菱UFJ」と「野村證券」と書いていきます。

 野村證券は、戦後圧倒的な営業力で日本の証券界を席巻していたのですが、1990年代に入り「損失補填事件」と「総会屋事件」で完全に勢力を削がれ、基盤の営業部隊から遊離した経営陣の迷走で、すっかり「並み」の会社になってしまいました。

 最近の日本の証券市場の地盤沈下は、業界のリーダーであった野村證券の責任も非常に大きいと言えます。

 特に現社長の渡部賢一と副社長の柴田拓美の、海外業務への無謀な傾注と高額報酬の独占などについては本誌でも取り上げました。

 2月3日付け 野村證券「社長」の話  その1

 2月4日付け 野村證券「社長」の話  その2 

 に詳しく書いてあります。

 営業現場から支持されていない首脳陣が、何とか特色と実績を出そうとわざわざ海外の投資銀行業務にのめりこみ、破たんしたリーマンの欧州とアジア部門の人員だけを引き取り成果連動報酬を導入したものの、首脳陣が業務そのものを理解していないため今回の欧州の経済問題で、必ず巨額損失が出てくるはずです(これには絶対の自信があります)。

 「ZAITEN」にも書かれているのですが、株価も30年以来の安値に落ち込んでいるのも当然と言えます。

 一方、三菱UFJは日本最大の銀行グループなのですが、その証券業務は迷走を繰り返しています(三菱UFJに限らず、どこの銀行グループも似たようなものなのですが)。

 極めつけが、2008年の米国金融危機時に瀕死のモルガンスタンレーに90億ドル(当時の為替で1兆円)もポンと出資し、その後国内でモルガンスタンレー証券との合弁会社を何故か2つもスタートさせたものの、何のシナジー効果も生まれていないのです。

 4月25日付け「三菱UFJモルガンスタンレー証券の巨額損失の裏側 その1

 4月26日付け「三菱UFJモルガンスタンレー証券の巨額損失の裏側 その2

 に、当時のモルガンスタンレーとの交渉経過も含めて詳しく書いてあります。

 米国財務省のレターヘッド1枚で、1兆円を文字通り「ポン」と出したのです。

 しかし、三菱UFJは早くもモルガンスタンレーに見切りをつけたようです。そう書くと格好よく聞こえるのですが、要するに相手にされなくなったのです。

 まあ、1兆円の投資そのものは毎年10%の配当と2000億円ほどの売却益を生み出したのですが、その1兆円のために、国内では2回にわたって1兆4000億円もの公募増資を行って瀕死の日本の株式市場からリスクマネーを吸い上げ、また多額の貸付金を強引に「剥がし」日本経済の足を大きく引っ張ったのでした。

 まあ、三菱UFJも野村証券も、日本経済に貢献していないことにおいては似たようなものなのですが、三菱UFJの方の体力が圧倒的に強いため、このような噂になるのです。

 それより本誌で何度も書いているのですが、日本の金融行政は常に銀行は「性善説」、証券は「性悪説」なのです。だから「放っておくと悪いことをするに違いない」証券会社のトップである野村証券を、これまた銀行グループのトップである三菱UFJが買収することは、当局にとっても大賛成のはずなのです。

 だから50%以上の確率で実現しそうな気がします。

 前述の、野村證券「社長」の話 その2 で現社長の渡部を、メリルリンチを「身売り」に追い込んだスタンレー・オニール元CEOに非常に似ていると書きましたが、正解となるかもしれません。

 尤もそうなった暁には、野村證券の首脳陣は業務などそっちのけで保身運動に邁進することになり、事業があっという間に劣化してしまうと思うのですがね。