ヘッジファンドの巨人たち  最近の動向

 ヘッジファンドの動向は、当然ですが自ら語られることは少なく、ましては代表者が相場観について語ることも殆どありません。全く利益にならないからです。

 しかし、世の中には単なる「評論家」の無責任なコメントが溢れかえる中で、実際に巨額の資金を運用するヘッジファンドの責任者の数少ないコメントは非常に示唆に富みます。

 ほとんどのヘッジファンドの決算は11月で、大体年1回しか受け付けない解約の申し込みがそろそろ始まります。だから注意していますと、ヘッジファンドの動向が伝わってくる季節なのです。

 今年は、昨年のヘッジファンド運用者の個人所得第1位のジョン・ポールソン氏(49億ドル。ファンド全体の儲けではなく、あくまでも個人の所得です)の運用するポールソン・アンド・カンパニーの成績不振が囁かれています。

 依然として金(きん)の巨額ポジションは維持しているようですが、中国株や米銀株の値下がりが大きいようです。

 ポールソン氏は、金(きん)については、あくまでも景気浮揚のために大量にばらまかれたドルが長期的に下落し、代替通貨としての金の価値が上がるはずという基本的な見方を変えていないようです。

 一方、昨年の個人所得第2位(31億ドル)のレイモンド・ダリオ氏率いるブリッジウォーターは好調のようで、今年は個人所得トップの座を奪いそうです。

 ブリッジウォーターは運用タイプでいうと、通貨・株式・債券・商品などすべてに投資する典型的なグローバルマクロ型で、旗艦ファンドの運用残高が単独のヘッジファンドでは最大の5兆円もあり、グループ全体を合わせると10兆円を超えているようです。

 ファンドマネージャーを含む社員が1000人もいるのですが、「代表(ダリオ氏)を批判しない社員は評価が低い」とか「失敗を率先して話せる体制」など、特色ある管理体制をとっています。

 そのレイモンド・ダリオ氏の最近のコメントです。

 まず、ユーロ圏については現状の仕組みの維持を最優先に考える姿勢は「問題の先送り」で、特に財政問題を抱える南欧の経済を長期にわたって低迷させると予想し、やはり財政悪化に悩みながらもドルをいくらでも印刷できる米国経済の方が「まし」であると言っています。

 これはやはり、緊縮財政に固執する弊害について強調しているわけで、特にユーロ圏の経済・株式・通貨(ユーロ)の長期にわたる低迷を示唆しています。

 一方、米国経済については、「ドルをいくらでも印刷」しなければ、やはり経済・株式・通貨(ドル)が低迷するということになり、さしあたっては今週のFOMCでの追加緩和策に期待しているようです。

 ドルの方向についてはこれだけでは読みにくいのですが、多分量的緩和を含む積極的な政策をとる限り(ドルの供給増加によるドル安要因はあるものの)、少なくともドルはユーロに対して強くなると考えているように読めます。

 そういえば、前述のポールソン氏がちょっと前に「格付け機関や評論家の予想しか目にしないで運用することは、地雷の埋まった平原を裸足で歩くようなものだ」という意味のことを言っていました。まさにその通りです。

 日本でも、10年国債の向こう3か月の予想が0.80~1.20%、同じくドルの予想が72~82円と堂々と新聞(日経ヴェリタス最新号)に書いている「評論家」がいます。

 天気予報で、明日の気温は10℃から40℃の間です、と言っているのと大差がないと思うのですが、皆さんはどう思われます?

 4月11日付け「ヘッジファンドの巨人たち」もご参照ください。