そして誰もいなくなる

 ギリシャ問題が予断を許さなくなっており、また今週は米国FOMCもあり、そろそろ為替が大きく動きそうな予感がしています。

 また、読者の方から「基軸通貨のメリットについて書くと言っていたのに、まだか?」との催促も頂戴しています。

 これらについては、近々必ず書きますが、本日はこのテーマです。

 株主総会が終わった本年7月以降、TOBが急増しており、7~9月に18件も発表されています。

 その中には、ヤマダ電機が買収するエスバイエル(東証1部・コード1919)や、H2Oリテイリングが買収する家族亭ジャスダック・9931)などのように、上場会社が業務拡大のために安く放置されている上場会社をTOBで取得するものがあります。

 対象会社の株価が安く放置されているため、買収者が自らその業務を始めるより、かなり割安で済むからです。

 また、コージツ(ジャスダック・9905)のように、第2位の株主の敵対TOBに多数の株主が応じてしまい、なんと史上2番目の敵対買収が実現したものもあります。

 コージツの株主にしてみれば、敵対でも何でもとにかく高く株式を買ってくれればよかったのでしょう。それほど株式市場に買い手が不足しているのです。

 過去、敵対TOBの第1号は旧・ライブドアオートなのですが、これは会社の中にある現金を使ってTOBをしたという「とんでもない話」なのですが、なぜか全くお咎めがなく、現社名・カーチスとして今でも東証2部に上場しています。

 しかし最大の問題は、資産内容や業績が良いのにもかかわらず、あまりにも株式市場での評価が低いため、買収ファンドと組んだり銀行融資を受けたりして、自ら株式市場に見切りをつけて退出していくMBOが再び増えてきていることです。

 今年の初めに、幻冬舎やCCCなどで見られ、震災の影響などでしばらく止まっていた動きが再開しているのです。

 その中には、日本医療事務センター(東証2部・9652)、立飛企業(東証2部・8821)、新立川航空機(東証2部・5996)、マスプロ電工(東証1部・6749)などのように、資産や収益状況が大変良好な企業が含まれています。

 またバルス(東証1部・2738。「フランフラン」を直営展開)は、上場したままでは将来を見据えた思い切った経営展開ができないことをはっきりと理由に挙げています。

  もちろん、これらのTOBはすべて発表時の株価に対してかなりのプレミアム(平均50%以上のようです)を支払うのですが、それでも割安だと判断されているのです。

 要するに日本の株式市場は、特に優良企業にとって「全く役に立たない」市場となってしまっているのです。これからも退出していく優良企業が続出しそうな気がします。

 これは上場を維持するために、情報開示やコンプライアンスなどであまりにも多くの負担を強いられるにも関わらず、株価が低迷し資金調達もままならないからです。

 現時点での東証1部全銘柄の平均PBR(純資産倍率)がなんと0.94倍で、株式時価総額が全体の資産価値を下回っているのです。個別で見てもトヨタ自動車のPBRが0.81倍、ソニーが0.60倍なのです。

 これは株式市場が、本来の機能を全く喪失していることになります。

 東京証券取引所をはじめとする「当局」が、株式の流通市場や発行市場を規制だらけにして、摘発を繰り返した結果なのです。

 いつも言っていることなのですが、日本の金融行政では、株式市場は「放っておくと悪いことばかりするから常に監視をして摘発をしなければならない」市場とされているからなのです。

 とうとう、先日は数少ない海外の大手投資家まで、わざわざ香港当局に頼んで「処分」してもらったのです。

 9月19日付け「証券監視委員会による香港の運用会社の処分」に書いてあります。

 こういうことをしているうちに日本の株式市場は「誰もいなくなってしまい」、監視や摘発をする人間だけが税金で焼け太り、経済が疲弊しきっていくのです。