日本銀行(中央銀行)の役割とは  その2

 昨日、「日本銀行(中央銀行)の役割とは」を書いたのですが、読者の方から「世の中に金が回るようにするために、(金融緩和する分)直接国民一人当たりに現金を配れば途端に消費も何もアップするのでは?」というコメントを頂きました。

 思わず「考え込んで」しまいました。考えていくと意外に奥が深い問題なので、今日はこれについて書いてみます。

 まず2008年頃の話なのですが、アフリカのジンバブエという国でとんでもないインフレが起こりました。年率何百垓(がい)%といってもピンとこないのですが、大体1日で物価が倍になるようなペースだったようです(10日で1000倍になります)。

 これは、白人から国を取り戻して黒人政権が出来たのですが、白人の所有する土地や工場をすべてとんでもない安値で強制的に買い取る法律を作った結果、白人がいなくなって経済活動が全く停止したところへ、通貨(ジンバブエ・ドル)を大量に刷って対外支払いや、兵士の給料や、政府の物資購入などに充てていたからです。

 つい3年ほど前の話なのですが、経済活動などの「価値の裏付け」の全くない紙幣を刷ってバラまいて使ってしまえば、やはりとんでもないインフレになるのです。

 逆に言うと、「価値の裏付け」のある現金をバラまいても、需給ギャップが埋まるだけでインフレにはならないはずなのです。

 日本政府が国民に現金を配っても、それが日本政府の発行する「国債」を裏付けとして配られたものであれば、財政規律がどうかという議論を別にすれば、全く問題がないはずなのです。

 経済効果としては、減税(本来支払う税金の一部を、現金で配ること)と同じなのですが、実際には現金が「目の前で」配られる方がずっと効果がありそうなのです。

 確かにこの配られた現金は、配った日本政府が配られた国民から何ら対価を受け取らない「ジンバブエ的」支出なのですが、配られた現金が消費に回ると生産も増えて生産者の所得も増えるため、配られた現金以上の経済効果があるはずなのです。

 もう少し具体的に考えてみましょう。

 国民に現金を配るために日本政府が発行する国債は銀行が引き受けるのですが、銀行は日本銀行の当座預金口座に入っている預金を取り崩して「国債」を買うわけです。そして日本銀行は毎月国債を市中から買い入れているので、それに銀行が応じて国債を日本銀行に売却すると、再び当座預金口座に資金が戻ってくるのです。

 つまり銀行は、その国債を保有し続けても売却してもいいわけで、仮にこの国債が国民に現金を配るために発行された国債であったとしても、何ら不利益はないのです。

 実際、国民に現金を配るときには、何か「引換券」のようなものを郵送して国民が銀行で現金化するか、国民の口座に直接入金するので、国民が「引換書」を現金化したり入金された口座から現金を引き出したりすると、それだけ現金が国民の手元に残ります。 

 たしかに、それを消費に使えば、全体として消費が増えることになります。

 もちろん、これらの現金は銀行が出してくれているわけではなく、日本政府の代行をしているだけなのですが、結果的に銀行から現金が引き出されることは事実です。

 ここで銀行は現金が足りなくなるので、日本銀行に当座預金残高の一部を現金にするように頼みます。日本銀行からすれば、負債項目の当座預金が日銀券に置き換わるだけなので何も変わりません。

 ここが一番重要なところで、本来であればいくら日本銀行がいくら量的緩和をしても、供給された資金が日本銀行の当座預金から出て行かず国民生活に何の役にも立ってなかったものが、確かに現金として世の中に出てくるのです。

 そしてその一部でも消費に回れば、間違いなく経済活動がプラスになるのです。

 こう考えていくと、国民に「現金」を配るというのは決して間違った政策ではないのです。

 当然、財務省は猛反対します。財政赤字や国債発行額が増えるだけでなく、直接国民に現金を配る方法だと官僚の権限が入り込む余地がほとんどないからです。同じ予算を使うなら補助金にして受け皿や配分方法の選定に関与し、天下り先の確保に結びつけたいからです。

 突き詰めて考えれば、現金を直接国民に配る方法は官僚組織というフィルターを通さない直接的な景気刺激策なのです。

 だから効果も大きいはずなのです。

 ご意見を待っています。