井上工業事件はどうなっている?

 昨日(11月30日)のNY株式市場は、オープン直前に入ってきた日米欧・6中央銀行協調のドル資金供給のニュースで490ドルもの上昇となりました。

 もちろん本日(12月1日)は、日本を含むアジアや欧州の株式市場も大幅上昇となっていますが、所詮はドル調達に支障が出そうな欧州銀行を協力して支援するだけのことで、やや過剰反応のような気がします。

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 さて、本日は井上工業事件についてです。

 11月24日付け「井上工業架空増資事件」の続編なのですが、そこで、井上工業投資事業組合に出した資金が15億2000万円と書いたのですが、これは新株予約権の発行代金2000万円を含んでいたようです。

 最終的に投資事業組合が用意できた資金は3億円だけで、さらに払い込み後に1億8000万円の「手数料」も井上工業から受け取ったため、実際の資金負担が1億2000万円で時価18億円の新株を手に入れたのです。

 少しだけ、数字を訂正しておきます。

 結局問題は、株式市場に何の実績もない「新参者」が資金繰りに困っている上場会社に増資を持ちかけるものの、そもそも投資実績が全くないため「暴力団関係者」から借りるしかなく、また金融商品取引法も株式市場の最低のルールも知らないために平気で架空増資を会社に持ちかけ、挙句の果てに18億円の新株もすべて「暴力団関係者」に持っていかれて会社も倒産してしまうという「最悪の増資」となってしまったことです。

 2008年9月の事件なのですが、あまりにも「筋が悪い」ため証券取引等監視委員会も特捜部も取り上げていたかったところ、今般の「暴力団対策強化」の流れの中で警視庁組織対策3課が取り上げたものです。

 まあ、かつて田中角栄も勤めていたという名門建設会社を舞台にしているので、警視庁としても「暴力団対策」のための格好のターゲットに映ったようで証券取引等監視委員会の協力を得て摘発したものです。

 いつも言うように、捜査当局は国民のために「悪人を順番に懲らしめてくれている」わけではないのです。

 そこでの容疑は金融商品取引法の「偽計取引」で、非常に適応範囲が広く犯罪構成が容易なため証券取引等監視委員会「お得意」のもので、井上工業の元社長や投資事業組関係者や「暴力団関係者と言われる資金提供会社」の関係者など9名の逮捕状をとり、本日現在7名を逮捕しました(残る2名は海外逃走中)。

 まあ、「偽計」の実行行為は「増資が完了した」というIRを発表することで、これは間違いなく発表されているので「起訴」は出来るのですが、7名も逮捕して一体誰を「首謀者(立案者・実行者)」、誰までも「共謀者」として「起訴」するつもりなのか分かりません。

 また、こういう経済事件ではいつもそうなのですが、往々にして一番の悪人(つまり一番儲けた人間)が楽々と逃げ切ってしまい、それほど悪くない人間だけが起訴されて終わりということが非常に多く、この井上工業事件も全くその通りになりそうな気配なのです。

 捜査当局(この場合は警視庁組織対策3課)としては、「暴力団関係者」が関与した事件を「摘発した」という結果だけが重要なのです。

 井上工業事件の最大の問題は、逮捕されている当時の社長でもなく、投資事業組合の「責任者」でもなく、3億円(注)を当初用立てた「暴力団関係とされる資金提供会社」の関係者でもない、全く違うところに時価18億円の新株の大半が「流れた」ことなのです。

(注)実際は、払い込みの翌日に井上工業が支払った「手数料」1億8000万円のうち1億7000万円を回収しているため、実際に用立てた資金は1億3000万円です。1000万円は話をつないだブローカーがポケットに入れたようです。

 まあ警視庁組織対策3課が、その新株の大半が「流れた」ところまで踏み込める可能性は非常に少なく、逮捕した中から2~3名を「偽計で起訴」して忘年会ということになりそうです。

 「偽計取引」とは、「有価証券の売買を有利に行うため、虚偽の情報を流して世間を欺くこと」で、株券が「流れて」来たので「売却」したら「数億円儲かった」では「偽計取引」にならないからです。

 次回は、「オリンパスはその後どうなっている?」です。