ユーロ圏国債の一斉格下げ検討の影響

 オリンパスのことばかり書いていても世界の潮流に取り残されそうなので、本日はこの話題にします。

 12月1日に大手格付け機関S&Pが、ユーロを構成する17か国のうちの15か国の格付けを格下げ方向で見直すと発表しました。

 正確には「クレジットウォッチ・ネガティブ」というもので、向こう3か月以内に格下げの可能性が50%程度あるという意味です。まあ、発表してしまったからにはメンツもあるので本当に格下げするんでしょうね。

 ここで、民間企業のはずのS&Pがユーロ圏や世界経済の命運を握っていることの不条理さとか、S&Pは米国も格下げしているので「つじつまを合わせた」などを議論するつもりはないのですが、少し冷静になって考えてみましょう。

 当然、格下げ方向の対象になっている15か国には、最上格(AAA)のドイツ、フランスなど6か国が含まれています。まず、現在の欧州金融安定基金(EFSF)はこの6か国の保証額を前提にしているため、根本的に瓦解するとまでは言わないものの現在議論されているEFSFの機能強化案も頓挫してしまう可能性があります。

 日本政府が何の疑問も持たずに購入しているEFSF債も、当然格下げになります。

 まず一番影響を受けそうなユーロ圏の各国国債の利回りですが、ドイツ国債の「札割れ」があった直後の11月25日の各国10年国債の利回りは、ドイツ2.25%、フランス3.66%、イタリア7.23%、スペイン6.63%でした。

 しかしその後、イタリアが独自の財政削減案を決定したことや、ユーロ圏諸国の財政規律強化に向けて新たにEU条約を制定する動きが出ていることもあり、日本時間12月8日の午前零時現在の利回りは、ドイツ2.07%、フランス3.20%、イタリア5.98%、スペイン5.36%となっています。

  つまり、S&Pの決定があったにもかかわらず、ユーロ圏すべての国債利回りが低下しており、特にイタリア、スペインなどの債務問題国の利回り低下(価格上昇)が大きいのです。因みにギリシャ国債だけは28.9%と上昇中です。

 (実は本日の記事をアップする直前に、イタリア、スペイン国債の利回りが上昇したのでチェックしていたのですが、内容を書き換えるまでに至らないと判断しましたので、国債利回りだけ更新してアップします。遅れまして申し訳ありませんでした。)

 これは非常に重要なことなのです。

 つまりユーロ圏の財政赤字問題やユーロそのもの行方に対して、従来の懐疑論一辺倒の「市場心理」が明らかに変化してきたのです。

 非常に非科学的なことを言うようなのですが、市場(マーケット)は理屈で考えても決して当たらないものです。だから経済学者や経済評論家は理論整然と「外れる」のです。

 市場(マーケット)にすべての答えがあるのです。

 もう1つ、市場(マーケット)を見ていて考えたことを書きます。

 11月30日に、日米欧の6中銀が短期のドル資金・供給拡充のために協調したのですが、世界の銀行間の短期ドル資金の需給を示すLibor 3か月は0.53%と全く変化していません。

 12月3日付けのメルマガ「ドル資金供給の協調策で見えてきたもの」をご参照ください。

 つまり、確かに(特に)欧州の銀行は万一の時には短期のドル資金を中央銀行から調達できるようになったのですが、日々の膨大なドル資金調達は市場から行っており、その調達の困難さは何も変わっていないということなのです。

 欧州銀行に限らず、世界的に銀行の信用問題は何も改善していないことになります。

 よく、短期ドルの需給がタイトになると、ドルそのものの需給が改善してドル高になると言っている「専門家」がいるのですが、間違いです。

 短期のドルを調達するのは普通ドルを貸し出しなどに使ってしまった銀行であり、もし銀行が「そのドルを返してほしい」と言っても「はい返しましょう」という訳にもいかないため、為替に影響があるような最終的なドル需給とは何の関係もないからです。

 ところが最近、市場(マーケット)をよく見ていると、「円安」になって行きそうな気がしているのですが、その辺のことは近々書くことにします。