オリンパス事件で見えてきた「落としどころ」  その1

 12月6日に公表された第三者委員会の調査報告書を受けて、見え始めてきたオリンパス事件の「落としどころ」について考えてみます。

 まず第三者委員会の調査報告書は、オリンパス事件の「社会的評価」「今後の捜査方針」への重要な「指針」となります。つまり報告書の中で「問題」と指摘されたことが「問題」であり、「問題」とされていないことは今後も含めて「問題」ではないのです。

 まあ常識とはかけ離れていても、ここは調査報告書の「基準」に従うしかなさそうです。

 まず、上場維持について再度考えてみましょう。読者の方からも「あまり断定的に上場維持だと言わない方がいい」とご忠告を頂いているのですが、以下のように考えます。

 現在、東京証券取引所は(確認中)と(審査中)である2つの理由で監理銘柄に割り当てています。このうち(確認中)は、遅れている2011年9月期の決算発表が出来れば(それには過去5年分の有価証券報告書の訂正が必要なのですが)解除されます。

 もう1つの(審査中)は、訂正された有価証券報告書の中身をチェックして、それが「会社ぐるみ」であるとか「悪質」であるとかに該当すれば、東京証券取引所上場廃止にすることが出来るのですが、いずれにしても有価証券報告書が訂正されてからの(審査)となり、多少時間がかかります。

 ここで、第三者委員会の調査報告書の「表現」が重要になるのですが、すくなくとも「会社ぐるみで悪質」という表現はありません。過去の粉飾事件で上場廃止になったのは刑事事件化したカネボウとライブドアだけで(注1)、日興コーディアルIHI(注2)などは刑事事件化せず上場も維持されました。

(注1) 東証マザース上場企業では、アイ・ビー・イー・ホールディングス、シニアコミュニケーション、オーエッチティーの3社が悪質な粉飾決算として上場廃止になっています(まだあったかもしれません。ご指摘ください)。

(注2) IHIについては、2007年より導入された「特設注意市場銘柄」に指定され、約1年後に解除になっています。

 まあ、「会社ぐるみで悪質」であるかどうかの判断基準に「刑事事件化」するかどうかがあることは確かなのですが、仮にオリンパスが「刑事事件化」するとしても、調査報告書にあるように主導したのが山田・森両氏で、元社長の3人についても「知っていた」としているだけで主導したとはなっていないため、結局「会社ぐるみで悪質」という判断にはならないと思われます。

 日興コーディアルについては当時の社長自ら主導し、高額の収益連動ボーナスまで得ているのですが、「会社ぐるみではなく悪質でない」という東京証券取引所の奇怪な判断で上場が維持されました。

 昨年11月17日付け「あの事件はどうなった? その2」にライブドア事件との比較で書いてありますので、ご興味のある方はお読みください。

 まあ、最終的には東京証券取引所の判断なのですが、今の状況から考えて勝手に上場廃止には「出来ない」と確信します。ただ、IHIと同じ「特設市場銘柄」に指定される可能性はあります。

 それより非常に重要なことは、第三者委員会の調査報告を受けてオリンパスの現経営陣は昨日(12月7日)、現役員が総退陣し来年2月にも臨時株主総会を開催して「新経営陣」を選ぶことを発表しました。

 新設する「経営改革委員会」に大きな権限を持たせ、現経営陣が株主総会に提案する新体制や、事業見直し案や、他社との資本・業務提携や資産売却などすべてを事前に審査するとあります。

 どの報道にも、「誰が」現役員の総退陣と「経営改革委員会」の設置を決め、「誰が」「経営改革委員会」の人選を行うのかが書かれていません。本当の意味の主語がないのです。

 つまり「誰か」がオリンパスの全権限を掌握することが、いつの間にか決められていたわけです。もう一度、第三者委員会の調査報告書を読み返してみますと「そうしなければならない」理由が幾重にも織り込まれています。恐るべき深慮遠謀なのです。

 つまり、次は「誰の刑事責任を問うのか?」だと思っていたら、なんと次は「誰がオリンパスを手に入れるのか」に一足飛びに進んでしまっていたのです。

 東京電力を「手に入れる」のに9か月もかかっているのに、オリンパスは1日で終わったのです。恐るべき「早業」です。

 その「誰か」とは、誰でしょう?

 まあ、「官僚」と「銀行」なんでしょうね。

 しかし、これを機会に(大王製紙もありましたので)「官僚」と「銀行」による企業統治が一層進んでしまうのでしたら、企業の活力は全く削がれてしまい、株式市場は長期に低迷してしまいます。

 やはりオリンパスのPBRは1.0になり、とりあえず純資産が1100億円くらい残りそうなので1株=400円が適正価格ということになります。

 それから、ウッドフォードさんはもう出る幕がないようです。お疲れ様でした。

 続きます。