MLB(Major League Baseball)の近況

 先週の続きの「オリンパス事件の落としどころ」も書くつもりなのですが、休日明けの本日は少し「肩の凝らない」この話題にします。

 先週末にダルビッシュ投手が、ようやくポスティングシステムによるMLB入りを表明しました。

 MLBでは既に有力FA(Free AgentのことでFinancial Advisorではありません)選手との契約が佳境に入っており、もともと有力投手が少ない今年のFA市場では早くもその数少ない有力投手の所属が決まり始めており、まさにぎりぎりで絶妙のタイミングでした。

 やはり代理人のアーン・テレム氏(松井の代理人でもあります)の手腕のようです。

 早くも現地では、ポスティング金額(移籍金)が6500万ドル(50億円)との予想も出ています。過去最高が松坂の5100万ドル(当時の為替レートでは60億円)なので、ドルベースでは過去最高となりそうです。

 今年の日本ハムの選手年俸総額が25億円くらいだったはずなので、まさに大ボーナスとなります(ポスティング金額は前所属球団に丸々入り、選手への年俸とは全く別です)。

 さらにダルビッシュ側が2000万ドル以上の年俸を要求しているとの報道もあります。現在のMLBで年俸が2000万ドルを超えている投手は3人(ヤンキースのサバシア、メッツのサンタナ、フィリーズのハラディ)しかいないことを考えると「ちょっといくらなんでもなあ」という気もするのですが、もともと米国は自分の価値を高く売り込むことが当然の風土なので批判を浴びることはなさそうです。

 ただ、今季のFA市場での有力投手の契約状況を見てみますと、投手ではダルビッシュより上にランクされていたCJウイルソン(レンジャーズ)が5年7750万ドルでLAエンジェルス(後述します)へ、2009年に完全試合を達成しているバーリーが4年5800万ドルでフロリダ・マーリンズへ移籍しているのですが、両者とも事前の予想をやや下回る契約でした。

 残っている数少ない有力FA投手のなかに黒田投手(ドジャーズ)がいます。こちらの方がMLBでの実績(4年で41勝)もあり、獲得に必要な金額もせいぜい2年2200万ドルくらいなので優先順位をダルビッシュより上にする球団もあるようです。

 ダルビッシュの場合は、ポスティング金額と合わせて1億ドル以上が必要となるため、支払える球団は限られています。さらにその中で今季のFA市場で出遅れている球団と言えばさらに限られてきます。現実的なところはテキサス・レンジャース、トロント・ブルージェイズワシントン・ナショナルズ(私のおすすめです)あたりで、日本の報道にあるヤンキースレッドソックスは既に先発投手陣がほぼ固まってきており高額の入札は見送るはずです。

 投手以外の有力FA選手の契約状況を見てみますと、今年の全FA選手のトップにランクされていたカージナルスのA ・プホールズが10年2億5400万ドル(198億円)でLAエンジェルスと契約しました。これは事前予想を大きく上回ります。

 契約総額では2007年のA・ロドリゲスがヤンキースと交わした10年2億7500万ドルに次ぐものです。ただ、この契約は4年経過しているのですがロドリゲスの成績も毎年降下しており「不良債権化」しつつあります。

 ここで、プホールズだけでなく前述のCJウイルソンも獲得したLAエンジェルスについて少し書いておきましょう。

 正式名称をLos Angeles Angels of Anaheim(略称:LAA)といい、もともとウォルト・デズニーが長く所有していたのですが、2005年に実業家アルトゥー・モレノ氏が取得しました。MLBで初めてのヒスパニック系のオーナーなのですが、もともとヒスパニックの多い土地柄でもあり、また球場入場料などを引き下げたりして地元からも支持されています。

 実は、プホールズなどとの大型契約締結と時を同じくして地元テレビ局との契約を見直し、なんと20年30億ドル(2340億円)もの契約を引き出しました。当然、プホールズなど有力選手との「大型契約」が追い風になった「もっと大型契約」なのです。

 単純計算ですが、テレビ局からの収入が今年までの年5000万ドルから一気に年1億5000万ドルになったのですから、新たに契約したプホールズとCJウイルソンの合計年俸の約4000万ドルは、すっかりお釣りが来ているのです。

 LAAの球団価値は2010年末で5億5400万ドル(MLBで9位。1位はヤンキースの17億ドル、2位がレッドソックスの9億1200万ドル)ですが、すでに大幅に増加しているものと思われます。因みにモレノ氏はLAA球団を2005年に1億8000万ドルで取得しているのです。

 つまりMLBは、投資対象としても十分魅力があるのです。FA選手の契約状況を長々と書いているのも、ビジネスとしてのMLBを知ってほしいからなのです。

 最後に、いまさらなのですが映画「マネーボール」を見てきました。見ないで本誌にコメントを書くのも「失礼」だと思ったからですが、「フィクション」としてはまあまあ楽しめました。

 しかし、本来のMLB球団のGM(General Manager)としての仕事内容の描写については、実際とかなり離れており大いに不満が残りました。

 これはMLB球団経営の根幹にかかわるところで「何故MLBは儲かっているのに、日本のプロ野球は儲からないのか?」にも関連してくるので、また日を改めて書くことにします。

 でも、明日は「オリンパス事件で見えてきた落としどころ その2」ですよ。