野村証券の劣後債と銀行の劣後債

 本日は昨日から始めた「2012年はどうなる」シリーズの第2回を書くつもりだったのですが、昨日(12月20日付け)の「野村証券が銀行傘下に」について、野村証券の劣後債に付けられている「条件付き債務免除特約」はバーゼル3準拠型にするために付けたにすぎず、本誌の指摘は見当違いであるとのコメントを頂きました。

 非常に重要なことですので、本日は「2012年はどうなる」シリーズを早速中断して、これについて書いてみます。

 昨日の記事を書くにあたって、当然に同時期に発行されているメガバンク劣後債の発行条件、顧客向け営業資料、発行登録追補目論見書などはチェックしており、決して「きちんと調べないで」書いたわけではありません。

 詳細は後で繰り返しますが、3大メガバンクすべてがここ半年以内(つまりバーゼル銀行監督委員会が、先般の世界金融危機から得られた教訓に対応するための包括的な対応「バーゼル3」が示された後)に公募劣後債を発行していますが、すべて典型的な劣後事由(日本の裁判所による破産・会社更生・民事再生の手続き開始、または日本以外の法域におけるこれらに相当する手続き開始)が明記されているだけで、件(くだん)の「条件付き債務免除特約」に類するものは一切見当たりません。

 野村證券に付けられている「条件付き債務免除特約」とは、野村證券が「本社債の債務免除を受けないと」あるいは「公的資金を受け入れないと」存続が不可能になると金融庁(ここが重要です!)が判断した場合にデフォルト(元利金が支払われなくなる)となることです。つまり野村證券が倒産しなくてもデフォルトしてしまうのです。

 バーゼル銀行監督委員会による「実質破綻」の定義が曖昧なために付けたまでというご指摘に対しましても、当然メガバンクも野村証券も劣後債発行に際して提出書類・発表書類などはすべて金融庁(財務局)のチェックを受けており、その内容についてはすべて金融庁の「意向」が反映されていないと認められないもので、何故、野村証券の劣後債だけが「わざわざ強調」させられているのかが重要なのです。

 並列に論じるべきでことではないかも知れませんが、近年上場企業(特に業績不振企業)の資金調達(特に株式発行)については金融庁(財務局)や取引所のチェックが非常に厳しく、あらゆる情報やリスクの開示が求められ、それらを反映した条件設定にしないと絶対に認められないものなのです。

 これは、もちろん「当局の責任回避」の動きなのですが、野村證券劣後債についても「将来発生しうるリスク」すべてを反映した、さらに言うと「将来に当局に責任が及ばない」条件設定にすることが求められ、その結果、付けられた「債務免除特約」なのです。

 まあご指摘の内容は、野村證券が営業店に対して「指導」されている説明なのでしょうが、本誌の指摘は決して「見当はずれ」ではないと確信しています。

 でも、貴重なご指摘ありがとうございました。よろしかったら引き続きコメントを頂きたいと思います。

 劣後債の話になったついでに、最近発行されたメガバンク劣後債についても書いておきます。

 三菱UFJが本年7月に発行した個人向けの1600億円の劣後債は、10年償還ですが5年目に途中償還条項がついており、利率が1.11%です。

 三井住友が本年11月に発行した同じく個人向けの1500億円の劣後債は、同じ10年償還で5年目に途中償還条項がついており、利率が1.08%です。

 劣後債は償還期限まで5年を切ると、自己資本に算入できる額が減少するために10年償還で発行しておき5年目に途中償還条項を付けるものなのです。

 まあ、これらの利率が「十分か」と聞かれれば、リスクから考えて「非常に不十分」なのですが、そもそも銀行の5年物預金金利は0.08%以下なので(確かに1000万円までは補償されるのですが)、こちらの方が「驚異的に不十分」なのです。

  一応、同じような条件の海外で発行されている劣後債の流通利回りを見ておきますと、三井住友のドル建て劣後債で2015年10月に途中償還条項が付いたもの(実質4年弱)が3.75%程度です。

 詳しい説明を省きますが、これは円建てに換算しますと3%程度となります。つまり海外で主に機関投資家向けに発行されている劣後債に比べて国内で個人向けに発行されている劣後債は、利回りで2%も低く設定されているのです。

 まあ2009年前半の金融危機直後に、みずほ銀行が海外(ドル建て)で14.95%もの利率の優先証券(確かに期限付き劣後債よりかなり格付けが落ちるのですが)を発行しておきながら、国内では知らん顔して2%台で劣後債を大量に発行していたように、銀行の「資本政策」についてはいろいろ「とんでもない話」が多いのですが、もし時間がありましたら昨年10月17日付け「エクイティファイナンスの裏側・儲けたのは誰だ? その3」だけでも読んでみて下さい。

 さて、明日は「2012年はどうなる」シリーズを続けます。多分「米国について」です。そのあと「ユーロについて」や「中国(北朝鮮を含む)について」などと続く予定です。

 また、本日オリンパスの増資についての報道が出ています。前述のように増資についてはすべて「当局の意向」を反映したものでなければ報道されるはずがなく、当然「上場維持」が既定の事実となっているのです。

 まあ、日本長期信用銀行みたいに「外資」に騙し取られるより、「オール日本」で「最終処理」する方がいいですね。

 それから、オリンパスには今週中に「予定通り」強制捜査が入るようです。ここでも警視庁が前面に出るのか東京地検特捜部が出てくるかによって少し意味が違うのですが、今となればもうどうでもよいことです。