2012年に起こりそうなこと  その4  「結局、何も変わらない捜査当局」

 先週21日にオリンパスへの強制捜査が行われたのですが、年度内(つまり来年3月まで)の立件を目指すという悠長な話のようです。

 「容疑」は金融商品取引法違反(有価証券報告虚偽記載)になるようで、まあ来年になると「容疑者」を2~3人逮捕するのかもしれませんが、全く緊張感がありません。

 本誌で何度も書きましたように、オリンパスはこれから官僚と銀行が主導して最終的にはどこかの日本企業に引き取ってもらう形で「最終決着」するはずで、「捜査当局」はあくまでもその過程で必要とされれば出てくるだけで、もうどうでもよい事件のはずです。

 オリンパス事件は海外から発覚した「捜査当局」にとっては何のメリットもない事件だからです。同じ理由で東京証券取引所がリスクをとってオリンパス上場廃止にすることもありません。

 本誌では10月14日のウッドフォード社長(当時)解任から、注目すべきポイントを「実況中継」してきたのですが、結局は「捜査当局」を含む「官僚組織」のほぼ狙い通りに決着することになりそうです。

 話題が変わりますが、あの大阪地検特捜部の証拠改ざん事件で逮捕(犯人隠避容疑)された元大阪地検特捜部長・大坪弘道氏の「勾留百二十日」(文芸春秋)を読んでみました。

 これはご本人がその中で繰り返し強調されているように「検察庁を守るために犠牲にされた」ことには間違いないのですが、読んでみて言いようのない「違和感」が残りました。

 原因をいろいろ考えてみたのですが、結局は「検察庁」という最強組織が日頃平気で行っている「検察庁全体の存在感のために事件を選び、容疑者を選び、シナリオを選び、粛々と有罪に追い込む」という日常業務の1つに過ぎず、それがたまたま「選ばれた容疑者」が身内の元特捜部長(と副部長)だっただけなのです。

 確かに大坪氏の「無念」はわからないわけではないのですが、これだけが「特別不条理な事件」でもなく、日常茶飯事的に一般国民に向けられている刃(やいば)なのです。

 どうも大坪氏はこの点に関する認識が欠けており、ご自身が「最大の被害者」という立場で書かれているので、一般国民にとって「違和感」が出るのです。

 「検察庁」から「官僚組織全体」にまで視点を広げて考えてみますと、そもそも最初に厚生省の女性局長(当時)が「容疑者」に選ばれたのも「官僚組織」の中の勢力争いで、さらにその女性局長が「検察庁」のタイムリーエラーで無罪となったあとは、以前より要職に復職されています。

 これは、通常の事件で一般国民が「容疑者」に選ばれて、仮に無罪となった場合でも(そもそも非常に稀なケースなのですが)、以前以上の立場に復帰できるということは絶対になく、深いダメージを負ったままとなるのです。

 結局、この事件は最初から最後まで「検察庁」あるいは「官僚組織」という一般国民から遠くかけ離れた世界での出来事であり、「検察庁」や「官僚組織」が一般国民から遊離した特権階級であることを改めて認識させられただけなのです。

 ここで、この犯人隠避事件では大坪・元特捜部長らが前田・元主任検事の「改竄」を知っていたかどうかの1点のみが争われています。

 まあ、人を疑うのが「商売」で、その中で最も人を疑う能力に長けているはずの元特捜部長が、「誤ってデータを書き換えてしまったかもしれない」という前田・元主任検事の説明を何の疑いもなく聞き入れたとは非常に考えにくいのです。

 しかし、だとすると元特捜部長は絶対に上司(具体的には大阪地検検事正と大阪高検検事長で、ご両方とも直後に自主退職されています)に報告しているはずで、これだとますます大変なことになるので元特捜部長(と副部長)が握りつぶしたという「見立て」になるのだと思います。

 ところが本の中には、これらに関する記述が不自然なほどありません。

 まあ、一般国民が首を突っ込むことではないのでしょうが、これも「違和感」の1つなのです。

 また話題が変わるのですが、証券取引等監視委員会が本年1月の「りそな銀行」の公募増資に関して、発表直前に株価が値下がりしたのはインサイダーの疑いがあると言いだしています。

 これは何も「りそな銀行」に限らず、増資を行ったすべての銘柄にインサイダーの疑いがあるのですが、「りそな銀行」に対しては「経営陣がインサイダー取引により株価が値下がりしたのを承知しながら増資を強行させた」という「全く新種の疑い」を出してきました。

 よく考えてみますと「りそな銀行」は細谷頭取の勇退時期が近付いているため、旧大蔵省から頭取を天下りさせる「状況づくり」のような気がします。

 年明けに突然「大問題」として出てくるかもしれません。