日本の財政について考える  その3

 最近の消費税増税論議のなかでいろんな意見が出ているのですが、もう少し原点に立ち返って考えてみましょう。

 まず、国や地方公共団体の行う行政サービスの非効率さとか、官僚の利権や天下りとか、銀行の貸し渋りだとかを一旦横に置きます。

 日本国全体を1つとして考えると、経済活動を行っていくうちに資金が足りない部門と余る部門が必ず出てきます。ここで資金が余った部門から資金が足りない部門に資金がうまく流れるように金融仲介機関(とりあえず銀行と思ってください)があります。

 日本国全体を1つの貸借対照表として考えると、資産として家計が1471兆円(預金771兆円・証券164兆円・保険と年金準備金421兆円)、民間非金融法人が754兆円(預金183兆円・証券155兆円)、中央政府と地方公共団体が483兆円を保有しており、総合計が2708兆円となります。

 一方、負債は家計が354兆円(借入294兆円)、民間非金融法人が992兆円(借入326兆円・証券405兆円)、中央政府と地方公共団体が1093兆円(証券912兆円)であり、総合計が2439兆円となります(資産総額と多少合わないのですが、とりあえず気にしないで下さい)。

 ここで銀行・その他金融機関・保険・年金基金・投信・ノンバンク・財政投融資・政府系金融機関などは、あくまでも資産と負債を仲介するだけの金融仲介機関であり、これらの集計には入ってきません。

 ここで海外関係を考慮に入れると、2708兆円の資産のうち582兆円(証券348兆円)が海外に投資されており、2439兆円の負債のうち342兆円(証券169兆円)が海外からの資金です。

 つまり、日本国全体でみると2708兆円の資産をもち、そのうち582兆円を海外に投資しており、一方2439兆円の負債があり、そのうち342兆円が海外からの資金だということです(以上、すべて平成23年9月末時点の資金循環統計から)。

 つまり、どこにも問題がないのです。

 これでどうして日本国が破綻すると思うのでしょう?

 国債残高が900兆もあると言っても、これは日本国全体の1部門である中央政府の、これまた負債部門だけを見て騒いでいるだけなのです。

 三菱UFJ銀行の負債(預金)が130兆円もあり、さあ大変だと騒ぐのと変わりがないのです。

 ギリシャなどが問題になるのは、国内の資金で国家債務(つまり国債残高)を吸収できず海外の資金で賄っているからなので、そもそも比較すること自体が間違っているのです。

 ただもう少し考えを進めると、財政赤字が大きいということは日本国全体の1部門である中央政府と地方公共団体の業務(行政サービス)の採算が悪化しているということで、対応としてはサービス料金(税金)を上げるか、合理化とか業務の一部の民間移譲などでコストカットをしなければなりません。

 常識的に考えて、銀行借り入れが多くて採算が悪化している企業に対して、銀行はコストカットや不採算部門の売却などを勧めると思いますが、「値上げしてもっと儲けろ」とは言わないと思います。

 今のような不況時に、値上げしたら売り上げが落ちて採算がもっと悪化してしまうからで、逆に好景気になれば値上げしても採算が向上するはずです。

 これと全く同じで、採算の悪化した中央政府や地方公共団体がまず行わなければならないのは合理化と一部業務の民間移譲であり、今のような不況時にサービス料金の値上げ(増税)を行えばもっと採算が悪化して、結果的にもっと資金不足になってしまうのです。

 消費税をはじめとする増税論議は、この辺の常識に全く反していたずらに「危機感」を煽っているだけなのです。

 逆に意識的に無視されている議論は、国債とは日本国全体の1部門である中央政府の「負債」であり、同時に家計や民間非金融法人にとっては「資産」だということです。決して「使って消えてしまっている」わけではないのです。

 経済原則から言って、国債金利が低下を続けるということは、資金の需給関係から見て「借り手」が「貸し手」に対して優位にあるということです。

 だからしばらくサービス料金の値上げ(増税)を行わず、(もちろん合理化によるコストカットは当然なのですが)不足する資金は資金余剰で(困っているはずの)家計などからどんどん借り入れて(国債発行)あげればよいことになるのです。

 非常に簡素化した理論なのですが、間違っていないと思います。