オリンパス事件とは何だったのか?

 先週末(1月20日)、東京証券取引所オリンパスを「特設注意市場銘柄」に指定しました。「特設注意市場銘柄」とは最長3年の猶予を与えて企業統治や内部管理体制の改善状況を確認するもので、その間の同社株式の取引は継続されます。

 また同時に1000万円の上場契約違約金を求めるようです。

 東京証券取引所は、上場がとりあえず継続されることに対して「隠されていた損失額を決算に反映しても債務超過になっていなかった」ことと「損失隠しには歴代トップが関わっていたものの組織ぐるみではなかった」ことを理由に挙げています。

 まあ、ライブドア債務超過でなくても「稀に見る悪質な犯行」と即刻上場廃止にしたことや、歴代トップのかかわる事例こそ「組織ぐるみ」だと思われることなど、東京証券取引所の「その時々の不思議な判断」は今に始まったことではないのですが、今回は止むを得なかったはずです。

 オリンパス事件とは海外から発覚した巨額粉飾事件で、通常の国内の経済事件のように「落としどころ」が決まってからマスコミを通じて発表されるのではなく、「落としどころ」が決められる過程が実況中継されたため、上場維持について東京証券取引所が独自に判断できない事情は想像できていました。

 つまりオリンパスの「落としどころ」とは、社会的責任を追及するよりも、出来るだけ企業価値を毀損せずに「オール日本(もちろん官僚組織も含む)」で管理下に置き、特に巨額の銀行貸付けを保全することであり、従って企業価値の毀損につながる「上場廃止」は勝手に切れないカードだったはずです。

 社会的責任をそれほど追及しないと考えた理由も、そもそも海外で発覚した事件なので日本の「捜査当局」としては敗戦処理案件であり「全力で取り組むモチベーション」が出ず、それより官僚組織全体として支援企業や貸付けのある銀行を含む「オール日本」の中でしっかりと存在感を出すこと(要するに利権確保)を優先したはずだからです。

 まあ日本長期信用銀行(現・新生銀行)みたいに、徹底的に外資に儲けられてしまうよりマシだと思います。昨年1月12日付け「あらゆる失政が凝縮された日本長期信用事件 その1」と、1月13日付け「あらゆる失政が凝縮された日本長期信用事件 その2」に書いてあります。かなり古い事件なのですが決して忘れてはならない日本金融行政史最大の汚点なのです。時間があったら読んでみて下さい。

 オリンパス事件に話を戻しますが、一応「責任者の刑事責任の追及」はあるはずですが、もう必要最低限にして山田・元常任監査役と森・元副社長だけを粉飾決算金融商品取引法違反の有価証券報告書虚偽記載)で3月頃までに逮捕すると思われます。

 しかし総額140億円もの巨額報酬を「掴み取り」した外部コンサルタントなどは「逃げ切り」ます。計画段階からの粉飾の共謀(当然そうなのですが)を立件されなければ大丈夫で「共謀していません。報酬は正当な対価です」と言えばよいのです。釈然としないのですが、まあそんなものなのです。

 それから粉飾決算については証券取引等監視委員が課徴金を課すはずですが、時効でない期間に資本市場から資金調達をしていないため課徴金の額は株式時価総額の10万分の6(だいたい2000万円くらい)で済みます。

 あとは、株主が投資損失に対して損害賠償請求を起こす可能性があります。これは会社あるいは経営陣が悪質な不正を行ったことによって株主が損失を被った場合に認められるのですが、オリンパスの場合はあくまでも会社ぐるみではなく一部の役員の暴走という「認定」になるため、損害賠償が認められる可能性は低いと思われます。

 もう一度繰り返しますが、今後オリンパスを管理する「オール日本(もちろん官僚組織を含む)」は、出来るだけオリンパスの信用力や資産内容が毀損しないように行動します。

 先ほどの刑事責任(逮捕予定者)のなかに菊川氏を含む歴代社長を含めていないのは、歴代社長まで逮捕してしまうと「会社ぐるみ」の意味合いが強くなり、株主の損害賠償裁判で不利になって企業価値の毀損に結びつくと思うからです。

 まあこの辺が「オリンパス事件とは何だったのか?」への「取り敢えずの回答」です。

 お断り

 本誌は、オリンパスのように個別企業について書くことはありますが、それらを含めて株式市場で個別銘柄の推奨をすることは一切ありませんので、ご了承ください。