ユーロ上昇! 何か変わったのか?

 ユーロは、圏内9か国の格下げ直後の安値(1月16日に1ユーロ=1.262ドル、対円で97.04円)から上昇しており、本日(1月24日)午後10時現在(日本時間)1ユーロ=1.300ドル、対円で100.60円前後となっています。

 何か変わったのでしょうか?

 ニュースだけ拾ってみますと、先週末が期限だったギリシャの債務再編はまだ合意していないものの決裂はなさそうだとか、IMFの融資枠が1兆ドルに拡大されそうだとか、格下げされたEFSF(欧州金融安定基金)の危機対応力を維持しつつESM(欧州金融安定メカニズム)の稼働を前倒しにして5000億ユーロの支援を可能にできそうだとか、昨年末にECBが約50兆円の資金を域内銀行に3年の期限で供給したため資金繰りが落ち着いているなどが挙げられています。

 また、本日から2日間の予定で米国FOMCが開催され、何らかの緩和策(多分時間軸の延長)が打ち出されるとの予想もユーロを押し上げています。

 しかし、よく考えると根本的には何も変わっていません。危機対応機能が多少強化されそうなだけです。

 要するにユーロは「状況が普通に悪い」程度だと構成する各国のエゴが出て(正確には各国の議会の承認が必要なため)簡単に「解決策」がまとまらず、たまたま今回の格下げで「これは本当に大変だ」と「急にまとまりがよくなった」だけなのです。 これでしばらく小康状態が続くと「何だ、今のままで良いのか」となり、また新たな危機になって慌てるまで何も進まないのです。前述のESMにしてもユーロ構成17か国の議会の承認が必要です。

 つまり、いつまでたっても根本的に解決しないのです。

 先日、世界銀行が発表した2012年の世界経済見通しではユーロ圏だけがマイナス0.3%とマイナス成長予想です(日本・1.9%、米国・2.2%、中国8.4%、世界全体2.5%)。

 マイナス成長で、根本的問題である財政問題は決して解決しません。

 もう1つ大変重要なことは、昨年末にECBが「量的緩和」に踏み切っていることです。表立っては「量的緩和」という言葉を使っていませんが、第1弾で域内の銀行に供給した4892億ユーロ(約50兆円)は、FRBのQE2の6000億ドル(国債買入れ)に匹敵します。1月8日付け「ユーロ急落の本当の理由」(号外版)をご参照ください。

 多分、まだまだ供給すると思います。

 つまり、表立っては決して言わないもののECBをはじめとするユーロ圏首脳は、はっきりと「量的緩和」に踏み切って「ユーロ安政策」に転換したのです。

 つまり、どう考えてもユーロの上昇は一時的なのです。

 本誌が昨年9月に予想した、向こう半年以内(つまり本年3月まで)に1ユーロ=1.10~1.15ドル、対円で85~90円の予想は変えていません。

 唯一これを変更しなければならないケースは、本日からの米国FOMCで「思い切った緩和策」が出てくることです。

 米国株がリーマンショック後の高値に近づいてきており、米国は「思い切った緩和策」をとる必要はなさそうなのですが「ユーロ安政策」に対抗してくる可能性があり、注目しておく必要があります。

 日本でも、本日まで日銀政策決定会合が開かれていたのですが、平成23年度の実質経済成長率をマイナス0.4%に下方修正し(昨年10月時点ではプラス0.3%でした)、「景気の足踏み」を確認してゼロ金利政策を維持し、ユーロ安・円高を「注視」していくそうです。

 つまり日銀は、円安に一番効果があり1円の国民負担もかからない「量的緩和」をまたしても見送ったのです。まさに「注視」するだけで何もしないのです。

 無策の円高は続きます。

 本誌ではユーロについては何回か掘り下げて書いています。とりあえず昨年12月26日付け「2012年に起こりそうなこと  その3  英国のEU離脱」だけでも読んでみて下さい。