米国FOMCと市場の反応

 昨日(1月25日)、米国連邦制度準備理事会(FRB)は2日間の連邦公開市場委員会(FOMC)終了後の声明で、政策金利を「少なくても2014年の遅くまで」異例の低水準で維持する意向を示しました。従来は2013年後半までとなっていたので「少なくとも」1年間は延長したわけです。

 新たな「意向」はこれだけだったのですが、市場では追加の量的緩和(QE3)が行われることを「既定の事実」と受け取ったようで、NY株式も12756ドルと昨年5月のリーマンショック以降の高値(12928ドル)に接近しました。

 ドルも前日から対円・対ユーロともやや反落し、1ユーロ=1.315ドル、1ドル=77.50円前後となっています。

 1つだけ、非常に気になっていることがあります。それは米国10年国債の利回りが声明後も低下を続け、本日(1月26日)の欧州時間で1.95%程度まで低下していることです。

 米国10年国債の利回りは(以下、省略して「国債利回り」と書きます)、米国経済の「実体」ではなく「先行き」を一番正確に反映します。以下に実例を挙げてみます。

 2008年秋のリーマンショックで国債利回りは直前の4%台から2.1%まで急低下しました。そして金融市場の安定のためにFRBは2009年3月から1年間かけて総額1兆7500億ドルの政府機関債などを市中から買い入れました。いわゆるQE1です。

 買い入れたのは国債ではなかったのですが、それだけの長期債券が市中から吸い上げられれば国債利回りも低下するはずなのですが、実際はその間に国債利回りは上昇を続けQE1が終了する2010年3月には4.0%になっていました。

 逆にQE1終了後、ギリシャ問題という外部要因もあったのですが、最大の買い手を失ったはずの債券市場に再び資金が流入し、2010年10月には国債利回りは2.4%まで低下しました。

 2010年11月にFRBは景気対策のため6000億ドルの国債買い入れを決定しました。いわゆるQE2なのですが、またもその間に国債利回りは上昇を続け2011年2月には3.6%になりました。

 さらに逆にQE2が終了する直前から国債利回りは低下をはじめ、米国国債の格下げ(昨年8月5日)があったにもかかわらず一時1.7%台、おおむね2%前後で現在に至っているのです。

 要するにQE1でもQE2でもFRBが国債などを市中から買っている間は利回りが上昇し、買い付けをやめると途端に利回りが低下するという、需給関係と全く反対の動きをしているのです。

 これはFRBが市場から債券を買い付ける「量的緩和」を行うと、まず景気回復が期待されて株価が上昇し、同時に(これが重要です!)実体経済が好転するだろうと期待で国債利回りが上昇を始め、これらの相乗効果で本当に実体経済が好転するのです。

 逆に「量的緩和」が終了すると、その逆のことが起こり国債利回りは下落するのです。

 現時点でFRBは、手持債券が償還になった場合の国債での再投資と、昨年9月に決定した4000億ドルの短期国債売り・長期国債買いを続けており、新規の債券購入(量的緩和)は行っていません。しかし、昨日のFOMC終了後の声明から新規の「量的緩和(いわゆるQE3)」が近いと市場が判断しており、その結果株式が上昇しドルも安くなっているのです。

 しかし国債利回りが逆に低下しているのです。昨日のNY株式が2010年5月初旬のリーマンショック後の高値(12928ドル)に近づいたのですが、その時点の国債利回りは3.4%でした。

 繰り返しですが、過去は「量的緩和」への期待が高まっただけで景気回復を先取りして株式が上昇して同時に国債利回りも上昇していたのですが、今回は反応しているのが株式だけなのです。

 確かに株式は企業業績など個別材料により反応するもので、債券(国債)は経済全般の見通しをより強く反映するものなのですが、それにしてもバラバラの反応なのです。

 あえて解説すると、株式市場は量的緩和による「金余り」の側面をより強く見ており、債券(国債)市場は量的緩和による景気回復をより「懐疑的」に見ていることになります。

 だとすると、従来の「量的緩和」の実体経済への効果が今回はあまり期待できないことになります。だんだん日本みたいになるのかもしれません。

 いずれにしても暫くは、米国10年国債の利回りに注目してください。

 さらに付け加えますと、この米国10年国債利回りと一番きれいに連動しているのが日本株式なのです。これについては昨年1月31日付け「日本株はどうなる?」で1998年頃まで遡って書いてあります。東日本大震災の前に書いた記事ですが、時間があったら読んでみてください。

 少し長くなるのですが、今週はこれで終わりなので頂いている「豚積み(ぶたずみ)の日銀当座預金の付利をやめたら銀行が買いオペに応じない」というコメントにお答えしておきます。

 一概に言えないかもしれないのですが、銀行が買いオペに応じる理由は手元流動性を確保すること、市場を崩さず(国債などを)売却できること、日銀への「実績づくり」などと思われ、その代り金が入る当座預金の利息が(オペに応じるかどうかの)判断材料ではないはずです。

 総額30兆円の当座預金残高が平残で維持されていれば、年間300億円ものプレゼントになるのです。そもそも日銀の買いオペ自体が銀行(証券会社も短資会社も対象なのですが)の特権と言え、さらに代わり金にまで付利する必要は全く無いと思います。 長くなりましたが、土曜日の昼頃には週末の海外市場を見てメルマガを発信します。登録がまだの方は登録しておいてください。