禿鷹がいなくなる

 本日(1月23日)の日経平均は222円安の10486円となり、ドルが一時88円近く、ユーロが117円近くまでの円高となりました。

 昨日の日銀の追加金融緩和を巡って、政府と日銀の間に根本的な理解の違いがあるようですが、これは明日以降にして、本日はお約束した個別銘柄についてです。

 本年1月7日にあおぞら銀行(コード・8304)が、大株主であるサーベラスが5億9125万株を売り出すとのIRを出しました。その後、売り出し価格が1株=231円、引き受け価格が224円~226円と決定されたため、サーベラスは1330億円ほどを手にすることになります。当たり前のことですが、あおぞら銀行には1円も入りません。

 現在のサーベラスの持ち株が7億2903万株なので、売り出し後は1億3778万株(7.29%)だけの株主になってしまいます。禿鷹が日本から出ていくのですが(注)、サーベラスの取得コストは既に「タダ以下」になっているので、まるまる利益として持ち帰ることになります。

(注)他にサッポロビールなどを売却したスティールパートナーズ、PGMを売却したローンスターなどがあります。禿鷹というと失礼なのですがゴールドマン・サックスアコーディア・ゴルフを売却しています。

 あおぞら銀行は1998年に経営破綻した日本債券信用銀行のことですが、ほとんど同時期に破綻した日本長期信用銀行(現・新生銀行)が、リップルウッドなる全く無名の禿鷹に「タダ同然で、かすめ取られた」反省が少しはあったからか、2000年9月にソフトバンク・オリックス・東京海上に譲渡されました。

 ところが2003年にソフトバンクが保有する13億8000万株を、すべて1株=73円でサーベラスに売却してしまいました。この時点のサーベラスの投資金額は1000億円ほどで、ソフトバンクには500億円ほどの売却益が出ました。

 そして2006年11月14日の再上場に際し、サーベラスは2億5800万株だけを570円で売り出し(手取り538.65円)、1390億円ほどを回収しました。つまりこれだけで投資金額以上を回収したわけで、サーベラスのコストは「タダ以下」になりました。

 その後のあおぞら銀行は、ご多分に漏れず業績も株価も低迷し、特にリーマンショック後の2009年3月期に2425億円もの最終赤字を出し、株価も100円前後と低迷します。

 そのころから、あおぞら銀行は積極的に自社株買いを行い、直近(本年1月18日現在)では4億250万株(21.31%)を保有し、そのコストは764億円(平均取得価格190円)となっています。不思議なことにサーベラスは、この自己株も共同保有として大量報告書を提出しています。まあ「すべて自分のもの」だと言うことなのでしょう。

 さらにサーベラスは昨年10月に、9249万株をこの自社株買いにぶつけて(1株=247円)228億円を回収しています。サーベラスは2008年4月に、株価対策のためかTOBで1億3200万株(1株=325円)を取得していたのですが、それらを入れてもコストは依然として「タダ以下」です。

 昨年10月23日付け「あおぞら銀行の公的資金返済を猶予」にも書いたのですが、あおぞら銀行には1567億円の未返済の公的資金(無議決の優先株)が残っており、昨年9月までに返済しなければ普通株に転換されて政府が大株主になるところでした。

 ところが、これが何と10年間も猶予されたのです。理由は分かりませんが、大株主が外資だったからとしか考えられません。

 つまり政府(正確には預金保険機構で、昨年12月に整理回収機構に移っています)は、普通株への転換を10年間も猶予することによって、「タダ以下」のコストのサーベラスの持ち株が希薄化して、株価が下落することを避けたのです。

 確かに金融庁は、株式が新規に発行されると希薄化で「既存株主」の利益が損なわれると非常に嫌っています。

 そしてサーベラスは、その希薄化が避けられ、また自社株買いで支えられた株価で持ち株の大半を売却して、利益を持ち帰るのです。

 本日の表題は「禿鷹がいなくなる」ですが、禿鷹も「日本は(当局に優遇されても)そろそろ潮時」と思い始めているのかも知れません。

 個別銘柄については、今後もいろんな側面から書いて行きます。