不気味に下落するユーロ

 キプロス政府は3月25日に、10万ユーロ以上の大口預金の4割程度をカットして、ようやく100億ユーロの金融支援を受けられることになりました。

 ユーロ圏の金融危機対策で預金者の負担とされたことは初めてで、しかも負担する大口預金者の大半はロシアをはじめとする「外国人」のようです。

 これは当然にキプロスの資金(預金)の海外流出を招き、新たな金融危機を引き起こすことになります。

 そこでキプロス中央銀行は、本日(3月28日)正午の銀行業務開始に先立ち、資本移動規制を発表しまた。

 預金の引き出しは1日に300ユーロ、定期預金の解約と小切手の換金は禁止、クレジットカードの海外使用は月額5000ユーロまで、5000ユーロ以上の海外送金の個別審査など、明らかに資金(預金)の海外流出を避けるためです。

 当面は4日間だけの規制のようですが、間違いなく長期化します。

 ユーロ圏でなければ、金融危機を引き起こした国の通貨は急激に下落するはずですが、キプロスの通貨はあくまでもユーロです。

 つまり自国通貨を切り下げられないため、ギリシャ国債は元本を7割近くカットし、キプロスでは大口預金を4割程度カットするなどの調整が必要となります。

 ただ自国通貨の価値は変わらないため、輸出増加による経済回復効果は全く期待できません。あくまでも「損失」をどこにツケ回すかの議論でしかありません。

 しかしギリシャ国債の元本をカットしても(ギリシャ国内の保有者も海外保有者も同条件でカットされたのですが)、国債なら利回りによっては新たな購入者が現れるのですが、預金の場合はカット率が1割だろうが4割だろうが、外国人は2度と預金しなくなるはずです。

 そこに実質的な資本(預金)流出規制が加わるので、余計に敬遠されるはずです。

 つまり海外からの預金に依存するキプロス経済は、回復する可能性が長期にわたって絶たれたことになります。

 ユーロ圏全体で考えると、まずギリシャではユーロ建て国債でも元本が毀損する前例を作ってしまい、キプロスではユーロ圏諸国への預金でも毀損する前例と、資本を引き揚げられない前例を作ってしまったことになります。

 これは、キプロスGDPが2兆円でユーロ圏全体の0.15%しかないので影響が少ないと考えるのではなく、世界中で流通しているユーロの信認の問題と考えるべきです。

 「ドイツのユーロ」と「キプロスのユーロ」の区別はなく、あくまでもユーロはユーロなのです。

 本日(3月28日)夕刻、ユーロは対ドルで一時1ユーロ=1.275ドル、対円で一時119.80円まで下落していました。

 キプロス情勢のほかにイタリア情勢も不安定だからですが、そのイタリアの総選挙で緊縮財政の見直しを掲げる中道右派が躍進した2月26日早朝(日本時間)のユーロは、対円で一時118円台に入ったのですが対ドルでは1.30ドル台を維持していました。

 つまりユーロは「不気味に下落」しているのです。

 あまり適当な表現ではないのですが、ユーロは「ファンダメンタルズ」で下落しているのではなく、「システミック」に下落しているのです。

 それではこのままユーロは下落を続け、そのうち崩壊してしまうのでしょうか?

 それはありません。

 EUがようやくドルに並ぶ国際通貨(基軸通貨)ユーロをここまで育てたので、簡単に放棄するはずがありません。またユーロ圏以外でも、ここまで存在の大きくなったユーロを使わないわけにはいかないからです。

 ユーロはどこまでも、知恵を絞った個別対応で凌いでいくことになります。