「マネタリーベース」と「長期国債」

 本日(4月4日)発表された日銀の「異次元緩和」のキーワードです。この2つに絞って解説します。

 直感的に「FRB型の金融緩和に近づけた」と考えます。

 まずマネタリーベースとは「日銀券発行高」+「貨幣流通量」+「日銀当座預金」のことです。2013年3月の月中平均では、日銀券が82.8兆円、貨幣が4.5兆円、日銀当座預金が47.8兆円で、マネタリーベースは134.7兆円となります(季節調整前).

 このマネタリーベースを今後は金融調節の操作目標にして、2013年末に200兆円、2014年末に270兆円(つまり今の倍)にします。

 ただ日銀の発表した資料では、2012年末で87兆円だった日銀券発行高が、2013年末に88兆円、2014年末に90兆円にしかならないところ、2012年末で47兆円だった日銀当座預金が、2013年末に107兆円、2014年末に175兆円に急増すると想定されています。

 つまり現時点では、積極的な資産買入れ(後述)により供給される資金の「ほとんど全部」が、日銀当座預金に「滞留」することを想定しています。

 今まで日銀は、特にFRBと比較して金融緩和に消極的であると批判されていたのですが、FRBも3月28日現在で1兆1776億ドル(112兆円)の紙幣発行に対し、1兆8296億ドル(174兆円)もの準備残高(日銀当座預金に相当)があります。現在の1ドル=95.50円で計算してあります。

 つまりFRBも積極的な資産購入によって供給した資金の「かなりの部分」がFRBに準備残高として「滞留」したままなのです。リーマンショック以前は、この準備残高は1000億ドル(当時の1ドル=100円として10兆円)未満しかありませんでした。

 突き詰めて考えればFRBと日銀の金融緩和の違いは、このFRBにある174兆円の準備残高と、日銀に47兆円「しか」ない当座預金残高の違い「だけ」なのです。

 だからこの当座預金残高を、2年後に175兆円にするのです。数字がほとんど同じなのは偶然ですが、「日銀として出来るのはここまでですよ」と言っていることになります。

 次は「長期国債」です。日銀では発行時に1年未満の短期国債でなければ、すべて残存年数にかかわらず「長期国債」と呼びます。「残存年数が長い国債」という意味ではありません。

 しかし本日の決定では、この「残存年数が長い国債」をかなり買入れることになりました。

 残存年数が3年未満の国債だけを買入れていた「資産買入等の基金」を廃止し、月額1.8兆円の国債を買入れている「通常の国債買入れ」と統合し、合計で月額7.5兆円程度を買入れることになりました。

 金額も大幅に増えているのですが、重要なことは従来3年弱だった買入れる国債の平均残存年数を、7年程度まで延長したことです。2013年度に新規発行される国債の平均年数が7年11カ月なので、それに近づけたようです。

 その月額7.5兆円の内訳は、残存年数1年以下が0.22兆円、1年以上5年以下が3兆円、5年以上10年以下が3.4兆円、10年超(40年まで)が0.8兆円などとなります。

 従来の買入れとの比較は省きますが、「残存年数の長い国債」が大幅に増額されています。この結果、3月20日現在で日銀が保有している94兆円の国債残高(短期国債を除く)が、償還分を考慮しても2013年末に140兆円、2014年末に190兆円に急増します。

 因みに2013年度の国債市中発行計画では、2~40年債が合計で118.8兆円新規に発行されるので「国債が無くなってしまう」と心配することはないのですが、それでもその新規発行の42%に相当する国債が日銀に吸収されることになります。

 つまり日銀は、あくまでも金融緩和目的では「資金供給の連続線上で短い国債」だけを買入れていた従来型の資産購入を、すべての年限の国債を買入れることに「大転換」したことになります。

 これも残存年数30年までの米国国債と長期債であるMBSを積極的に買い入れているFRB型の資産購入に近づけたことになります。ただFRBの主目的が、長期金利(特に住宅ローン金利)を低下させることによる景気刺激なのですが、日銀の本日の決定は、既に十分すぎるほど低下している長期金利を、さらに低下させることになります。

 既に本日、10年国債利回りは2003年の史上最低利回りを更新する0.425%となりました。

 国債先物価格も夜間取引で146円30銭台となっていますが、これはまだまだ割安で大幅な水準訂正があるはずです。