スプリントに対抗買収案を出したディッシュの思惑

 「金価格の急落」とどちらにしようか迷ったのですが、本日はこの話題です。

 米国第2位の衛星放送会社ディッシュ・ネットワークが4月15日、米国第3位の携帯電話会社スプリント・ネクステルに255億ドル(2兆5000億円)の対抗買収提案を行いました。

 スプリント・ネクステルは、昨年10月にソフトバンクが70%の株式を201億ドルで取得(買収)することで合意していました。すでに連邦通信委員会FCC)は認可しているのですが、米国外国投資委員会(CFIUS)がソフトバンクと中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)との潜在的な結びつきに懸念を示しています。

 これでスプリントの取締役会は、どちらの提案が株主に有利かを「厳密」に判断する義務が発生します。つまり必ずしも先行していたソフトバンクが有利というわけでもないのです。

 とりあえず4月15日のスプリントの株価は、一時18%高の1株=7.33ドルとなりました。昨年4月ころは1株=2.30ドルでした。

 ここで、強引に割り込んできたように見えるディッシュですが、その背景を解説します。

 スプリントはソフトバンクと合意後の昨年12月に、約51%を所有する高速無線通信会社のクリアワイヤを1株=2.97ドルで取得し、完全子会社化すると発表していました。ところが本年1月にディッシュが、1株=3.30ドルの対抗買収案を発表しました。

 クリアワイヤは豊富で良質な高速通信周波数を保有しており、スプリントの保有分と合わせれば携帯電話2強のAT&Tモビリティとベライゾン・ワイヤレスをも凌ぐことになります。

 ソフトバンクがスプリントを買収する最大の目的が、このクリアワイヤを含めた豊富で良質な高速通信周波数だったはずです。それがクリアワイヤ抜きでは、かなり「有難味」が薄れてしまいます。

 もともとディッシュは大手衛星放送会社ですが、2010~11年に破綻した衛星放送会社2社を合計29億ドルで買収していました。

 そしてその2社の保有する周波数を携帯電話に転用できるようFCCに「粘り強く」働きかけ、昨年12月に認可を勝ち取りました。その瞬間にディッシュの保有する周波数が90~120億ドルに「化けた」と言われます。

 繰り返しますが、それがソフトバンクのスプリント買収合意後だったのです。

 つまりディッシュとすれば、取得していた2社の周波数にクリアワイヤの周波数を加えると、全米有数の高速通信携周波数を保有することになるため、一気に攻勢に転じました。

 そのクリアワイヤへの対抗買収提案だけではなく、今回はスプリントそのものへの対抗買収提案となったわけです。

 結果的には、ソフトバンクの買収提案が「割高」ではなくて「妥当」だったことになるのですが、今後の展開は予断を許しません。

 ソフトバンクとディッシュの提案は、いろいろと前提が違うので比較が難しいのですが、単純に株主へ支払われる金額を比較するとソフトバンクが1株=6.22ドル、ディッシュが株式交換分を時価換算して1株=7.0ドルとなります。

 それにディッシュの有利なポイントは、ソフトバンクに懸念を示している米国外国投資委員会(CFIUS)の審査が不要なことです。

 ディッシュは各種の法廷闘争で大きくなっていった会社と言えます。ソフトバンクにとっては、何とも厄介な敵がいよいよ動き出したのです。

 少なくともソフトバンクは、買収提案の引き上げが必要となりそうです。