金価格急落が意味するもの

 金価格が、まさに突然に急落しました。

 NY金先物価格は、本年4月に入って1トロイオンス(約31.1グラム、以下省略)=1550~1600ドルのレンジだったのですが、4月12日(NY時間、以下同じ)に63ドル安の1501ドル、週明けの15日に140ドル安の1361ドル、16日には1320ドルの安値を付けて1387ドルで引けました。

 「後付け」解説としては、世界の金需要の半分を占める中国とインドの景気減速、キプロス中銀の保有金(4億ユーロ)売却予想、株式市場が好調なので安全資産の金から資金が流出、インフレ懸念の鎮静化などが挙げられています。

 同じ「後付け」解説でも、もう少し根本的に考えてみます。

 金価格は1989年から2004年中頃までは250~400ドルのレンジが続いたのですが、その後は世界的な株式・不動産価格の上昇とともに2008年初めに1033ドルまで上昇しました。

 金融危機の2008年10月に681ドルまで急落したものの、その後の世界的な金融緩和で再び上昇して2011年夏には1904ドルの史上最高値をつけ、ここ2年ほどは1550~1800ドルのレンジでした。

 要するに金価格は、景気が好調で世界的に資産価格が上昇していた(それほどインフレではなかったのですが)2004年~2008年に約2.5倍になり、金融危機後の世界的な金融緩和で約2.5倍になっていたことになります。

 確かに金価格は「インフレ(資産価格の上昇)」でも「世界的な金融緩和」でも、同じくらい上昇していました。

 それでは何故、その金価格が急落したのでしょう?

 日銀は、異次元の「金融緩和」で、2%の物価上昇(つまり「インフレ」)を実現するのではなかったのでしょうか?FRBも、「インフレ」に注意を払いながら「金融緩和(QE3)」を続けているのではなかったのでしょうか?

 こう書いてくると、1つのコモディティに過ぎない金価格が、世界経済やインフレの先行きを反映しているのではなく、単なる需給関係と投機ポジション解消の結果であるとのご指摘が出てくると思います。

 しかし歴史的に見て、金はドルよりもはるかに長い間「基軸通貨」だったわけで、今でも金価格は各国通貨の「通信簿」と言えるのです。

 つまり金価格が下落したのではなく、ドルをはじめ主要通貨の価値が上昇したと考えるべきです。

 インフレは通貨価値が下落することで、金融緩和は通貨を大量に発行するので、これも通貨価値が下落することを意味するはずです。

 その通貨価値が「上昇」したのです。

 正確に言うと、「世界的に金融緩和で通貨を大量に発行して、(特に日本では)インフレを起こそうとまでしているものの、主要国の通貨価値は上昇を始めた」ことになります。

 そう考えてくると世界的な(特に長期の)国債利回りの低下も、通貨価値上昇の結果とも考えられます。世界的な国債利回りの低下は、最近急に始まったわけではないので、むしろ金価格の方が「先週まで」通貨価値の上昇を織り込んでいなかったことになります。

 あまりにも世界的な金融緩和が通貨価値の下落を招くとの「世界の常識」が優勢だったので、金価格がなかなか下落しなかっただけなのかもしれません。

 いずれにしても、金価格を「1つのコモディティ価格」と見るのか、「世界の通貨の通信簿」と見るのかによって、今後の金融市場の「読み方」が全く変わります。

 本誌は「世界の通貨の通信簿」と考えています。

 今月の26日に発売予定の「闇株新聞 the Book」で、金と世界の通貨制度の変遷を歴史的にとらえ、金価格との比較で為替市場を考える手法を、かなり詳しく書いてあります。経験的に「たどり着いた」手法です。

 よろしかったら、ぜひ読んでみてください。