世界最古の銀行・モンテパスキを巡る騒動

 コメント欄にもリクエスト頂いていたのですが、なかなか奥が深そうな事件です。

 イタリア中部シエナの検察当局が4月16日、イタリア第3位の大手銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(以下、「モンテパスキ」)の損失隠しの捜査に関し、同銀行が野村ホールディングスのイタリア現地法人に差し入れていた担保金18億7000万ユーロ(2400億円)を差し押さえました。

 イタリア中部のトスカーナ州にあるシエナは、13~14世紀に最盛期を迎えた金融業を中心としとした都市国家で、そこに本店のある1472年創業のモンテパスキは、現在も営業している世界最古の銀行です。

 その世界最古の銀行が、金融危機前の大型銀行買収(アントンベネタ銀行)や最近のイタリア国債の値下がりなどで経営危機に陥り、何度か資産性の強い債券発行で乗り切っていました。

 ところが本年1月に、損失隠しのためのデリバティブ取引で損失が発生しており、野村とドイツ銀行がモンテパスキの元幹部の損失隠しに「共謀」していたと発表していました。

 当局が差し押さえた野村ホールディングスの担保金18億7000万ユーロ(2400億円)とは、損失隠しのために野村がアレンジしたデリバティブ取引のためのもので、野村は自社の財産が差し押さえられたわけではないと強調しています。

 ここでモンテパスキは、損失隠しの総額が5億5700万ユーロ(712億円、意外に小さい?)であり、これらのデリバティブの損失総額が7億3000万ユーロ(934億円)と発表しています。

 損失総額は最大で9億ユーロ(1150億円)にもなるとの報道もあるのですが、これらの損失の中に、隠した5億5700万ユーロが含まれているのか、それとも全く別にそれだけ損失が出たのか、さらにそれらの中で野村の分がどれくらいなのかは明らかにされていません。

 しかしいずれにしても野村が差し押さえられた18億7000万ユーロの担保金は「少なからず」毀損していることになります。その担保金をすべて差し押さえられれば(最終的には没収されます)、野村にも「少なからず」損失が発生することになります。

 正確に言うとイタリアの検察当局は、野村とモンテパスキの契約を凍結し、モンテパスキの資産がこれ以上流出しないための措置を取ったのですが、野村がそれらの取引を外部でカバーしていれば(当然そのはずですが)、その損益だけが野村に残ってしまうことになるからです。

 報道されている限りでは、ドイツ銀行の担保金は差し押さえられていないようです。

 また検察当局は、この担保金以外に野村がこの取引で得ていた8800万ユーロ(112億円)の利益の差し押さえにも動いています。要するに8800万ユーロは、野村にとって「あまりにも有利な取引による収益」であり、いわゆる高利貸しのような不正な利益として差し押さえ(つまり没収)対象になるようです。

 またドイツ銀行の得た収益は9200万ユーロ(118億円)と野村より多いようです。

 またモンテパスキはドイツ銀行に5億ユーロ、野村に7億ユーロの損害賠償を求めています。

 野村ホールディングスは、最悪の場合は毀損した担保金の損失を負わされ(ドイツ銀行と半々として7億3000万~9億ユーロの半分)、8800万ユーロの利益を没収され、モンテパスキに7億ユーロの賠償金を支払い、さらにイタリア当局にも「かなり」の和解金を支払う羽目になってしまいそうです。

 ここで「共犯」であるはずのドイツ銀行は、ユーロ盟主国ドイツの最大手銀行なので、同じような処分にはならないように思えます。

 つまり「世界最古のモンテパスキ」「ユーロ圏のドイツ銀行」「野村ホールディングス」と並べて考えると、何となく落としどころが見えてくるような気がします。

 久々に本誌に登場した野村ホールディングスですが、以前から「欧州で問題が起きる」と繰り返し書いていました。

 その端緒なのかもしれません。