官制本「アベノミクスの真実」の不都合な真実 その2

 今週はゴールデンウィーク中で本誌の発行が3回だけなので、その3回とも同じ話題というのも気が引けたのですが、どうしても強調したいところなので続けます。

 まず昨日付け記事で、2014年末の日銀は175兆円の「他人のカネ」(日銀当座預金で預かっているお金)で190兆円の長期国債を買入れていることになり、まさにヘッジファンドであると書いたところ、それは日銀券の発行でも信用的な側面は同じではないかとのコメントを頂きました。

 発表されている2014年末の日銀の予想バランスシートは290兆円(2012年末は158兆円、以下同じ)です。負債・純資産勘定が90兆円(87兆円)の銀行券と175兆円(47兆円)の当座預金なので、残りは政府預金・売現先勘定・引当金・純資産(準備金)などで25兆円(24兆円)となります。

 一方2014年末の資産勘定では長期国債が190兆円(89兆円)ですが、バランスシート総額が290兆円(158兆円)なので、長期国債以外の貸付金・短期国債・社債・ETFなどの資産も100兆円(69兆円)と、かなり積み増さなければならないことになります。

 さて日銀当座預金とは、日銀が資産を市中から買取った資産の代金を「支払わずに0.1%の利息を付けて預かっている」だけで、日銀のものではない「他人のカネ」です。それが2014年末に175兆円になるということは、その時点のバランスシート総額290兆円の60%も占めることになります。

 つまり2014年末の日銀は、2倍以上のレバレッジをかけて「本当に償還期限の長い国債を190兆円」と「何だか内訳の良くわからないその他の資産を100兆円」保有していることになります。

 因みに2012年末現在で、日銀の資本金(正確には出資金)は1億円、純資産である準備金が2.7兆円と「紙のように薄い」のです。

 そこで日銀の負債に計上されている日銀券ですが、これは返済の義務もなければ利息を支払う必要もありません。つまり「限りなく資本に近い」ものです。従ってコメントを頂いていたところですが、日銀券はいくら発行しても信用的な側面では「全く問題が無い」ことになります(注)。

 (注)あくまでも日銀が市中から資産を買入れて発行しなければなりません。日銀が日銀券を刷って国民に配ってはいけません。

 さらに言えば、この日銀券に相当する部分では「いくら長い国債を保有しても」問題は全くありません。日銀券は永久負債なので、これに相当する国債は30年債でも100年債でも構わないのです。

 しかし「他人のカネ」である日銀当座預金に相当する部分では「何を保有しても良い」ということにはなりません。

 確かにFRBでは、現在(4月24日)時点でも3兆3607億ドルのバランスシートのうち、3兆442億ドルの長期国債やMBS(これも長期債)を保有しているのですが、バランスシートの52%に相当する1兆7494億ドルが準備勘定(日銀当座預金と同じ「他人のカネ」)です。

 この比率は今後もっと上昇すると思いますが、昨日も書いたようにドルは基軸通貨で「世界中で保有されている」ので、さらにFRBのヘッジファンド化が進んでも、ドルの比率を急激に減らすことが出来ません。

 しかし日銀がFRB並みの(あるいはそれ以上の)ヘッジファンドになってしまったら、「世界中で円の保有が進み、円が部分的にも国際通貨(基軸通貨)になる」という望みが全く無くなってしまいます。

 別にそれでもよいではないか?と思われるかもしれませんが、その最大の弊害は「世界中で円の保有が進まないと、その運用手段である日本国債の海外保有が進まない」ことです。

 1000兆円にも上る国債残高を、海外保有が全く進まない中で日銀だけが「買い支える」構造の恐ろしさを、官制本「アベノミクスの真実」は全く無視しています。

 無視しているのではなくて、気がついていていないのだとすれば、もっと恐ろしいことになります。

 連休中に海外などで重大事件が起これば「臨時版」を発行します。