官制本「アベノミクスの真実」の不都合な真実 番外編

 大型連休の後半に入ったのですが、今週の同題の記事に対していくつかコメントを頂いており、説明不足のところもありましたので番外編を書きます。

 まず「日銀は当座預金で国債を買入れているわけではない」とのご指摘ですが、正確には日銀は国債を買入れた代金を(支払わずに)預かっていることになります。しかし日銀のバランスシートにおける意味は同じで、レバレッジがかかった状態といえます。

 従来の日銀は、緩和目的では3年以下(2012年4月までは2年以下)の国債だけを買入れていたので、その国債は比較的短期間で償還になってしまうので、その買入れ代金を(支払わずに)預かったままでもそれほど問題では無かったと思います。

 しかし現在は40年債までの長い国債も大量に買入れるため、「長い国債が償還になるまでレバレッジ状態を長期間維持する」か「長い国債を市中に売却してレバレッジを落とす」必要が将来的に出てきます。

 「だから何を懸念しているのか? 国債は自国で消化されているではないか?」とのご指摘に対してですが、懸念しているのは国債の発行残高の増加や、格下げ、国内の消化能力ではありません。もちろんインフレも(一部資産価格のミニバブルを除けば)、目標の2%すら難しいと思っています。

 懸念しているのは、円を発行する日銀のバランスシートが劣化することによる「円の信認の国際的低下」です。円の信認の低下は、結果的に日本の国際的信用を低下させます。

 日本に残された数少ない武器は「世界的に最も健全な日銀のバランスシート」と「一応確保されている独立性」を裏付けにした「円の信用力」だったはずです。それを自ら放棄してしまう弊害は非常に大きいと思うのです。

 「円の信用力」と「通貨としての円の強さ(つまり円高)」は全く違います。「ドルの信用力」と「通貨としてのドルの強さ」が全く関係ないことと同じです。

  ドルはいくら値下がりしても「世界中で何の疑いもなく受け取られて」おり、そしてその結果として米国国債も「世界中で何の疑いもなく保有されて」います。これがドルの基軸通貨としての特権です。

 これもコメント頂いている通りで「日銀のバランスシート」と「日本の財政バランスシート」と「日本全体のバラスシート」は全く別のものです。

 現時点では「日銀のバランスシート」が最重要と考えます。「日銀のバランスシート」を良好に保っておけば、国際金融市場における「円の信用力」を背景に「円の役割」が向上し、ドルが享受している基軸通貨としての特権を部分的にも肩代わりできるかも知れないからです。

 「基軸通貨」とは、まさに国際的に「何の疑いもなく受け取られ、保有され、運用される通貨」という意味で、最後の「運用される」の手段が国債で、円が部分的にも基軸通貨となれば、自動的に海外の日本国債の保有が増えることになります。

 1000兆円もある日本国債の残高が簡単に減るはずがなく、近い将来的には日本国債を「ある程度」海外に保有してもらう必要があります。

 「国際通貨と基軸通貨は全然違う」とのご指摘も頂いているのですが、文中では両方をほとんど同じ意味に使っています。つまり「円は部分的にも基軸通貨化すべき」と考えています。

 似た言葉で「国際決済通貨」があり、世界中でどの通貨にも交換できるハードカレンシーという意味です。確かに円はスイスフランやカナダドルなどと同じく「国際決済通貨」ですが、国際的に「何の疑いもなく受け取られ、保有され、運用される」基軸通貨ではありません。

 最後に、本誌は総論としては「アベノミクス」に反対しているわけではありません。しかしその弊害も十分に理解しておかなければならないと考えているだけです。

 その最大の弊害とは、日銀のバランスシートの劣化による「円の信認の低下」であり、「円の(部分的にも)基軸通貨化」が遠のいてしまうことです。

 だから日銀の「異次元」金融緩和は、米国政府の意向だと思うのです。