最近何をしていた? 証券取引等監視委員会の特別調査課

 証券取引等監視委員会の特別調査課とは、刑事告発を目的として犯則事件の調査を行うところで、強制捜査権限があります。

 その特別調査課が久々に強制捜査に乗り出したようで、お決まりのマスコミへのリークが先週末の5月25日に出ていました。

 リーク記事によりますと、株式会社三栄建築設計(東証1部上場・コード3228)の60%以上を保有する大株主の代表取締役が、自社株を不正に釣り上げた疑いがあるとして金融商品取引法違反(偽計)の疑いで強制捜査を受けたと報じられています。

 容疑が株価操作ではなく偽計になっているのは、犯罪の構成要件が非常に緩やかで、間違いなく有罪に持ち込めるからです。

 報道を読む限りでは、どの部分が偽計(投資家を欺くこと)に該当しているのかがよくわからないのですが、まあ何とでもなるのでしょう。

 これを受けて本日の三栄建築設計の株式はストップ安(300円安)の1079円となり、この代表取締役の持株の時価総額が1日で39億円も「目減り」してしまったことになります。

 証券取引等監視委員会の特別調査課が刑事告発に持ち込んだ最新の事件としては、4月30日のイー・アクセス社員のインサイダー取引事件があるのですが、ここ1年の間では、昨年12月のセイクレストの現物出資制度を悪用した偽計事件、昨年6~10月にかけてのAIJ投資顧問とアイティーエム証券関連の事件、そして昨年8月のSMBC日興証券・執行役員のインサイダー取引事件があるだけです。

 それから本年のゴールデンウィーク直前に発覚した1300億円が消えたMRIインターナショナル事件を担当すると報道されているのですが、自ら摘発した事件でもない海外案件なので「ほとんどやる気がない」と思われます。

 証券取引等監視委員会の組織図によりますと、特別調査課の人員が104人もいて、はるかに忙しそうな開示検査課(課徴金を科すところです)の42人の2.5倍もいます。

 確かに刑事告発は少ない方が良いともいえるのですが、それにしても104人もいて毎日何をしているのだろうと思ってしまいます。冒頭にも書きましたように、特別調査課が強制捜査に乗り出すときは必ずマスコミにリークするので、本当にここ1年で取り扱った事件は、ここに書き出した事件だけなのです。

 まあ水面下ではいくつか調査しているのだと思いますが、何しろ証券取引等監視委員会がスタートして以来、刑事裁判に持ち込んだ事件はすべて有罪となっているため、無罪になるリスクのない事件を意識的に選んでいるともいえます。

 無罪になるリスクのない事件とは、すなわち悪質な事件だと思われがちですが、実は全く違います。本件もそうですが「偽計」に持ち込めると100%有罪になります。従って最近は粉飾決算でも架空増資でも、すべて「偽計」にしてしているはずです。

 また逆に、非常に悪質な事件でも、少しでも無罪になるリスクがあると刑事告発しません。「闇株新聞 the book」にも取り上げた昭和ホールディングスなどは、会社の支配権を取った株主が増資で払い込んだ額の何倍もの金額を会社から持ち出していたのですが、2年も前に強制捜査を受けたものの、いまだに何の沙汰もありません。

 繰り返しですが、刑事告発は少ない方が良いともいえるのですが、本誌が知っているだけでも「驚くほど悪質な事例」が数多く放置されています。

 本日取り上げた三栄建築設計が、悪質ではないというつもりは毛頭ないのですが、たとえ裁判で無罪になる可能性はあっても、もっと果敢に取り組んでほしい悪質な事例が多数あることは事実です。