米国はデフォルトなどしない

 米国連邦債務上限の引き上げは、オバマ政権と野党・共和党の主張が平行線で一向に進展していません。今週17日(つまり米国時間の本日)にも、政府の資金が底をつき国債の利払いや政府の支払いができず、デフォルトしてしまうと騒がれています。

 そこまで心配する必要はありません。

 オバマ政権と野党・共和党の主張の「溝」は大きく、混乱そのものは簡単には終結しません。かといって米国(米国国債)はデフォルトしません。ギリギリのタイミングで最低限の債務上限の引き上げと暫定予算で乗り切るはずです。

 なぜならドルは基軸通貨なので世界中で流通しており、その運用手段として巨額の米国国債が世界中で保有され、それで米国経済が成り立っているからです。その特権を「つまらない政争の具」でフイにしてしまうことはありません。オバマ大統領も下院のベイナー議長も、悪い意味で歴史に名を残してしまうからです。

 言い換えれば、紙切れ(ドル紙幣)で世界中から財やサービスを購入でき、同じような紙切れ(米国国債のこと、実際は券面を印刷していないので紙切れでもありません)で連邦債務をファイナンスできる「特権」を、米国政府が進んで放棄するはずがないからです。

 米国連邦債務は、ブッシュ(息子)政権スタート直前の2000年末が5.5兆ドル、リーマンショック直後でオバマ政権スタート直前の2008年末が10.8兆ドル、そして現在が16.7兆ドルの上限に達しています。つまり連邦債務残高は2000年末以降だけで(あるいはブッシュとオバマの2人の大統領だけで)11.2兆ドルも増えています。要するにその間に3倍以上になりました。

 その一方で、外国人による米国国債の保有額は2000年末が1兆ドル、2008年末が3.2兆ドル、現在が5.6兆ドルとなっています。つまり2000年末以降だけで外国人による米国国債の保有額は4.6兆ドル増え、その間の連邦債務増加額の41%を吸収しています。

 ついでですが、2000年末のFRBの米国国債保有額は6000億ドルで、直近は2.1兆ドルに近いので、FRBも1.5兆ドル(13%)を吸収しています。

 ただ外国人の保有している5.6兆ドルの米国国債の国別内訳は、概算で中国が1.3兆ドル(注)、日本が1.1兆ドルで、あとはオフショア・マーケットであるカリブ海諸国が2800億ドル、OPEC諸国とブラジルが2600億ドルずつと続きます。要するに中国と日本だけで外国人保有額の43%も占めています。

(注)中国の現在の外貨準備は3.3兆ドルあり、ドルの比率が7割をこえているとされています。米国国債の保有が1.3兆ドルということは「何だかわからないドル資産」が1兆ドルもあることになり「謎」です。

 また16.7兆ドルの連邦債務のうち、市場性のある国債発行残高は11.4兆ドルほどなので、市場性国債の「約半分」が外国人に保有されていることになります。

 要するに米国(米国国債)の対外信用力を毀損し、ドルの基軸通貨体制まで危うくするデフォルトは、絶対に「割に合わない」のです。

 話が変わりますが、デフォルト騒ぎでFRBの量的緩和縮小の議論が「すっかり」霞んでしまっているのですが、この2つは密接に関係しています。

 FRBが量的緩和を続けて、世界中にドルを大量に供給して(ばら撒いて)いる重要な理由の1つは、少なくとも世界中でドル資産(主に米国株式と米国国債)が必要以上に売却されないようにするためです。

 リーマンショック時に、世界中で(特に欧州で)ドルが調達できず、結果としてMBSだけではなく米国株式が急落しました。それまでの米国は、ドルの供給を「引き絞り気味」にして基軸通貨であるドルの価値を保っていたのですが、その方針を100%変更して、ドルを世界中にできるだけ供給することによりドル資産の価値を守ることにしたはずです。

 ここから、少なくとも債務上限問題が完全に解決するまでは、FRBは量的緩和を縮小しない(できない)ことになります。仮に数か月間の暫定予算で乗り切ったとしても、完全に解決するまで「数か月以上」は量的緩和の縮小はないことになります。

 また米国株式は、連邦債務問題の暫定的な解決のたびに上昇し、仮に全面的に解決すれば「もっと」上昇することになりそうです。

 明日は「米国のことなど心配しているどころではないはずの」日本の国債についてです。