外貨準備の運用を一部民間に委託の意味

 政府は、外国為替資金特別会計(以下「外為特会」)で行う外貨準備の運用を、一部民間に委託する方針のようです。大体このように「突然の話」が出てくるときは、必ず「ウラ」があります。

  ここでいう「民間」とは、当然に海外の運用会社が含まれるはずで、またぞろ郵便局と「突然」業務提携した(別にがん保険の専門会社でもなんでもない)アフラックのようなケースが出てくることになりそうです。

  海外の運用会社に委託すれば「運用成績」が向上するかどうかの以前に、外為特会とは、その原資をすべて政府短期証券の発行で賄う100%国民負担でありながら、その規模や運用方針の決定に日本政府の意向がほとんど反映されていません。

 よく外為特会は、原油産出国やノルウェーのSovereign Wealth Fund(国家ファンド)のように考えられているのですが、実は全く違います。これらの国家ファンドは、すべて原油収入などで積み上げた余剰資金を国家のために運用しているものですが、外為特会とは借金(国債発行)で得た資金が、いくばくかの運用収入は上がるものの、日本の国策のために全くいかされていないものです。

  前回の自民党政権時の金融担当大臣が、当時のポールソン財務長官に「外為会計で保有する米国債の、せめて利息相当分だけでも自由に運用させて下さい」と依頼して、あっさりと拒否されていました。

  いうまでもなく「外為特会」とは、その規模も運用もすべて米国政府の意向にしたがっています。そこへ米国政府が直接「あれこれ」指図する代わりに、米国の業者に運用を委託することになるわけで、よりリスクの大きなもの(米国の業者がより儲かるもの)に国民負担(国債発行による資金)が投入されることになり、もっと状況が悪くなるだけです。

  外為特会は18ある特別会計の中で、国債整理基金特別会計や年金特別会計と並んで巨大なものです。9月末現在で1兆2734億ドル(124兆円)ある外貨準備を「運用」しています。

  最新の政府短期証券の発行残高は6月末の123.3兆円で、その「そのほとんどすべて」が外為特会に使われており、同じく6月末の外貨準備が1兆2387億ドルなので、ドル換算のコストが「ほぼ100円」と考えられます。

  昨年までは「巨額の評価損」があったのですが、最近はほとんど解消していることになります。まあ評価益になっても売却できないので、あまり意味がありません。

  外為特会の平成25年度予算は、運用収入が2.2兆円あるのに対し、支出が1.25兆円の国債整理基金への繰り入れなどの1.58兆円だけで、大幅な余剰金が出ています。

  外貨準備の運用状況は平成23年度のものが発表されているだけで、しかも通貨別内訳が公表されませんが、大半が残存5年以下の米国国債のようです。平成24年度の運用状況は11月中旬に発表されますが、あまりはっきりしたことはわからないはずです。

  外貨準備とは、もちろん外為介入で積み上がったものですがですが、2004年初めに突然35兆円相当の巨額ドル買い介入を行ったことがあります。そのコストは大体1ドル=115円程度でした。

  その目的は、2000年頃のITバブルの崩壊、2001年9月の同時多発テロによる景気の落ち込みで脆弱化していた金融システムを、しっかりと補強するためでした。

  最近は米国国債の利回りが低下しているため(現在の5年の米国国債利回りは1.25%程度)、運用収入がだんだん減少することになります。つまり外為特会とは、巨額の為替リスクを抱えた大幅にレバレッジのかかった国家ヘッジファンドなのです。

  そのファンドマネージャーまでを、米国の業者に任せようとしているのです。

  それでは、どうすればよいのか?ですが、最近はこのような「考えても、空しくなる」ことがあまりにも多いため、本日はここで終わることにします。