釈然としないウェッジHDに対する巨額課徴金納付命令

 証券取引等監視委員会が11月1日、ウェッジHD(JASDAQ上場・コード2388)の株式に係る偽計について、同社と昭和HD(東証2部上場・コード5103)および両社の株主であるタイのアジア・パートナーシップ・ファンド(以下APF)の実質オーナーである此下益司氏に対し、40億円超の課徴金納付命令を発出するよう金融庁長官に勧告したと発表しました。

 直接の嫌疑内容は、平成22年3月にウェッジHDの発行する8億円の転換社債をAPFが払い込んだと偽装し、さらに同社の資産内容や収益状況が改善するとも偽装し、同社の株価の上昇を計った「典型的な偽計」です。

 本件はその「悪質性」から、課徴金納命令ではなく刑事告発すべきものですが、証券取引等監視委員会も認めているように「嫌疑者が海外在住で事情聴取が困難なため」課徴金納付命令にしたそうです。別に此下氏はいつも海外にいるわけではなく、たまたま隠れているだけです。

 だとすれば、いくら課徴金が巨額であっても「全く意味をなさず」此下氏は悠々と逃げ切ってしまい、同社や昭和HDなど此下氏の親族などの息のかかった人物が経営(まあ資産の合法的搾取ですが)を続けることができてしまいます。

 課徴金納付は刑事罰ではなく、1円も支払わなくても罰則規定などではなく、間違いなく「うやむや」になってしまいます。

 昭和HDについても、此下氏はAPFを通じて平成20年6月に12億円ほどの第三者割当増資を引き受けて経営権を取得したのですが、その直後に何と27億円も昭和HDから引き出していた「レバレッジ架空増資」であることが発覚しています。

 さすがにこれは証券取引等監視委員会が平成22年6月に強制捜査をかけたのですが、何故か刑事告発を見送ってしまいました。

 そこで此下氏と昭和HD(一心同体です)が、何と本年6月に国家賠償請求訴訟を起こしました。7月16日付け「厚顔無恥の極み 昭和HDの国家賠償請求」に経緯も含めて詳しく書いてあります。

 要するに証券取引等監視委員会は、意味不明の遠慮で刑事告発を見送ってしまったため、完全にコケにされたのです。

 今回のウェッジHD株式に係る課徴金納付命令は、その報復とも考えられるのですが、すで既に述べたように実質的には何も意味はなく、此下氏にとっても一心同体のウェッジHDや昭和HDにとっても「全く痛くも痒くもない」のです。

 ここまでくると、此下氏やAPFを摘発できない「何かの」事情があり、辻褄を合わせるために金額だけ巨額な課徴金納付命令を勧告して「取り繕った」とも思いたくなります。

 また別にAPFも、日本の投資家から巨額の資金を集めたまま「その大半を消滅させている」のですが、これも不思議なことに詐欺等の捜査が行われている形跡が全くありません。

 本誌で何度も指摘しているのですが、証券市場を舞台にした事件は証券取引等監視委員会金融商品取引法違反だけで調査する「縄張り」になっています。

 もしAPFが、投資家から集めた巨額の資金が「消滅」していても、その資金の一部が昭和HDなどの上場会社に流入しているので(それ以上に還流しているのですが)、証券取引等監視委員会の「縄張り」で警視庁等が捜査できないとなっているのなら「大問題」です。

 11月1日付け「微妙になってきたAIJ投資顧問事件の判決」も、このポイントを突いてあります。

 此下氏のケースは、その証券取引等監視委員会が「縄張りの」金融商品取引法違反、それもIRなどの形式的な物証があるので簡単に有罪に持ち込める「伝家の宝刀」が使えるにも拘らず、何故か見送り続けていたのです。

 今回やっとウェッジHDに係る偽計取引を立件したものの、刑事告発を見送り「全く何の意味もない」課徴金納付命令にしてしまいました。

 釈然としないだけではなく、ますます疑念が湧いてきました。