「したたかな孫正義」と「したたかなダニエル・ローブ」の組み合わせ

 11月21日に「物言う株主」のダニエル・ローブ氏が、主宰するヘッジファンドのサード・ポイントがソフトバンク株を10億ドル(1000億円)取得したと発表しました。

 またローブ氏は、ソニーにエンタテインメント事業の分離上場を求めているのですが、ソフトバンクに対しては経営改革案を示すことはない純投資であると表明しています。

 ローブ氏によると、10月後半にソフトバンクの孫正義社長と会って投資に踏み切ったようです。だとすると平均コストは7500~7600円あたりで、発行済み株数の1%強を取得していることになります。

 ソフトバンクの株価は発表後の11月22日に急上昇して最高値の8330円をつけ、その時点で時価総額はちょうど10兆円に乗せ、引け値は8150円でした。

 直感的に「感じた」ことがあります。

 まずローブ氏の主宰するサード・ポイントは、投資した会社に経営改革を要求する典型的なアクティビストであり、同時に資金効率を上げるためレバレッジを掛けるヘッジファンドでもあります。

 いくら孫社長の経営方針に賛同したといっても、それだけでは投資対象にならないはずです。少なくとも最初から「経営改革を求めない純投資」と宣言してしまう必要はないはずで、手札は見せないで残しておくものだからです。

 それに加えて、1%程度の持ち株比率は「経営改革を求める」ためには少なすぎます。

 レバレッジについては説明されていませんが、ソフトバンクはソニーと違い新株予約権付社債を発行しておらず、それをリッパッケージした資金を使わずに売買益を上げる仕組みもありません。

 ヘッジファンドとは「レバレッジを掛けるもの」ではなく、収益目標が高いため「レバレッジが掛からないと投資対象にならない」のです。かといって単純に信用取引で買えば損失にもレバレッジが掛かってしまうため、またコールオプションの購入もボラティリティからプレミアムが膨大になってしまうため、それぞれ合理的な投資ではありません。

 つまりサード・ポイントは全額自己資金でソフトバンクに投資していることになります。

 いくらソフトバンクの株価が上昇しそうだといっても、単純に株式を取得したのであれば「アクティビスト」でも「ヘッジファンド」でもなくなります。

 「そんなこともたまにはあるだろう?」と思われるかもしれませんが、投資家の資金を預かっている限りは、投資手法を簡単に曲げてしまうことは「それだけで大きなマイナス」になります。

 そこから考えられることは、「したたかなダニエル・ローブ」が投資手法を曲げてでもソフトバンクに投資するほど、「したたかな孫正義」とメリットの多い共同戦線を張ったことです。発表されていない「密約」もありそうです。

 とりあえずはサード・ポイントが投資したというニュースでソフトバンクの株価を上昇させることですが、これはすでに成果が出ています。今後も「示し合わせた経営改革案」を提案して株価の一層の上昇を図るとか、「Tモバイルの買収」のためにサード・ポイントが側面支援するとか、結果的に双方にメリットのある方法がいくらでも考えられます。

 あくまでも「本誌の直感」ですが、大きく外れていないような気がします。

 ちなみにサード・ポイントの10月末時点の運用資産は140億ドル(1兆4000億円、もちろんレバレッジを掛ける前です)で、本年の年初からの収益率は19.4%のようです。

 それでは、本誌はソフトバンクの株価がもっと上昇すると思っているのか?ですが、10月7日付け「ソフトバンクの驕り」に書いた通り、ソフトバンクの勢いも株価も「ピークに近い」と思っています。