始まったロシアの金融危機(実況中継)

 ロシア中央銀行は現地時間の本日(12月16日)未明、政策金利を10.5%から17.0%へ引き上げました。先週末(12月12日)にも9.5%から10.5%に引き上げたばかりで、本年初めは5.5%でした。

 下落を続ける通貨ローブルに歯止めをかけるためで、ルーブルの対ドル相場は6月の1ドル=33ルーブルから原油価格と共に下落し、先週末(12月12日)には1ドル=58ルーブルとなっていました。

 ところが週明けの12月15日にはさらに急落して夕刻に一時1ドル=67ルーブルとなり、本日未明の緊急利上げとなりました。しかし本日早朝に一時1ドル=59ルーブルまで回復したもののすぐに反落し、日本時間午後9時過ぎには一時1ドル=79ルーブルとなり、現在(午後10時半)は1ドル=73ルーブル前後です。

 国から資金(外貨)が流出することにより通貨が急落する中で中央銀行が大幅に政策金利を引き上げて対抗することは、金融危機の最終段階にみられる典型的なパターンですが、大幅利上げでも対抗しきれないケースがほとんどです。

 ただロシアは原油やガスの輸出国で、これらのエネルギー商品はドル建てで取引されるため、ルーブルの対ドル相場が下落することは必ずしもロシアにとって悪いことばかりではないはずです。

 しかしロシアの経済規模は6月以降の数カ月で、ドル建てでみると半分以下に「縮んだ」ことになり、さすがに外交・防衛上「具合が悪い」ことになります。さらにルーブル安で輸入物価が急騰して国内では急激なインフレに襲われ、そこへ今回は国内金利の大幅引き上げがロシア経済を直撃します。

 

 何よりもウクライナ問題で欧米諸国から経済制裁を受けて外貨(ドルとユーロ)調達が困難になっていることに加え、ここのところのルーブル安で大量の外貨売り介入を余儀なくされており、ロシアの外貨繰りは危機的状況に陥っているはずです。

 ロシアは貿易収支・経常収支の黒字国で、10月末時点でも4200億ドルの外貨準備がありましたが、11月末には3700億ドルまで急減しており、現時点では3000億ドルを大きく割り込んでいるような気がします。

 ロシアの外貨準備の中には日本でいう公的年金基金と政府預金に含まれる1700億ドルの外貨が含まれおり、これはさすがに外貨売り介入に使えません。そう考えるとロシアの外貨準備は実質的に1000億ドル強まで減っているはずです。

 だから何が何でもルーブルの急落を止めて、外貨(ドルとユーロ)の流出を止めなければなりません。

 さらにつけ加えれば、ロシアの外貨準備には450億ドルの金準備が含まれており、市場ではロシアが金準備を大量に売却する可能性も囁かれています。ただ現時点では金価格に大きな変動はありません。

 ところでロシア中央銀行は、ルーブルをドルとユーロのバスケット(5.5:4.5のはずです)に連動させる為替政策を採用しています。ルーブルが下落を始めた8月18日にロシア中央銀行は、ルーブルのバスケットに対する1日あたりの変動幅を従来の2ルーブルから9ルーブルに拡大し、来年1月から完全変動制に移行すると発表していました。

 本日はこの変動幅も突破しているようにみえますが(本日も必死に介入しているようです)、現地時間の本日中にもロシア中央銀行は「20%台半ばへの再利上げ」か「介入を断念して変動幅を無制限にする」のどちらかに追い込まれる恐れがあります。

 今回の(といっても実質的には12月15~16日の2日間だけですが)ルーブル急落にヘッジファンドがどれほど参画しているかは不明ですが、ヘッジファンドはもともとルーブルを保有していないため「とんでもなく高利で」ルーブルを借り集めて叩き売ってドル(あるいはユーロ)を買っているはずです。

 実際はロシア国内の銀行・企業・富豪らが海外口座を使って「同じことをもっと大規模に」やっているような気もします。

 すべてロシア中央銀行が(というよりもプーチンが)白旗を上げて完全変動相場制に追い込まれるのを待っているのですが、あっという間にクリミアを併合してしまった「剛腕」プーチンが簡単に白旗を上げるとも思えません。何か「飛び道具」が出てくるような気もします。

 ルーブル急落は、同じように経済状況の悪い国の通貨にも波及します。とりあえずはトルコリラ、ブラジルレアルあたりが要注意と感じます。

 また円はさすがに反発しており、本日(12月16日)午後9時過ぎには一時1ドル=115.55円まで「円高」となりました。

 いずれにしてもロシア(プーチン)にとっては、ここ12時間ほどが「勝負」となりそうです。日本時間でいうと12月17日の昼前までで、そこを過ぎればロシア(プーチン)はとりあえず「持ちこたえた」となりそうです。