米国・キューバの国交正常化の背景

 オバマ大統領は昨日(12月17日)ホワイトハウスで演説し、1961年以降断絶しているキューバとの国交正常化交渉を始めると表明しました。

 キューバは1959年に米国の傀儡だったバチスタ政権をフィデル・カストロチェ・ゲバラが倒し(キューバ革命)、社会主義国家を建国して現在に至ります。当然ですがキューバ建国時はソ連、現在でもロシアが後ろ盾となっています。

 米国は1961年に国交を断絶したあと、ソ連キューバに核ミサイルを持ち込み1962年10月には米ソ緊張が極限に達しました(キューバ危機)。それ以来、米国とキューバは犬猿の仲となっていました。

 今回の正常化交渉は、首都ハバナに米国大使館を再開、米国民のキューバ渡航規制を緩和、キューバへの送金規制を緩和、対キューバ禁輸を緩和(通信機器輸出は緩和されますが武器輸出は不明です)、キューバテロ支援国家指定の見直しなどが含まれます。

 ちなみに米国が現在テロ支援国家に指定している国は、キューバ、イラン、シリア、スーダンだけで、北朝鮮は2008年に指定解除しています。

 

 米国・キューバ両国は昨年から水面下でバチカンローマ法王)やカナダ政府の仲介で交渉していたようですが、それでは何でこのタイミングで発表に踏み切ったのでしょう?

 大きく分けて2つの理由があります。

 1つは任期が2年を切ったものの内政・外交とも何1つ実績がないオバマ大統領が、歴史に名を残すためです。

 オバマ大統領は特に外交面でアフガニスタンイラク、シリアの混乱を収束できず、その一方でイランに接近してサウジアラビアやエジプトとの関係をギクシャクさせてしまうなどの迷走が続きます。

 もう1つは、後ろ盾のロシアが欧米の経済制裁に加え最近では原油価格とルーブルが急落して経済が混乱しているため、今のロシアは「叩いても大丈夫」と考えたからです。

 プーチン大統領は本年7月にキューバを訪れており、さらに関係が強化される兆しがありました。またオバマ大統領は対ロシア経済制裁の再強化も検討しています。

 どう考えても著しくバランスを欠く、大変に安直な決断です。

 米国内でもさっそく野党共和党が反発しています。野党といっても共和党は1月に召集される新議会では上下院とも多数を占めるため、そうでなくても困難な議会との折衝をますます悪化させることになります。

 キューバ移民の息子であるマルコ・ルビオ上院議員は「北朝鮮やイラン、ベネズエラなどの独裁者を優位に立たせるだけだ」と批判し、キューバ大使が指名されても上院は承認せず、また大使館設置予算も認めない意向を示しました。ルビオ氏は新議会でも上院外交委員長となるはずです。

 また先日、次期大統領選への出馬に意欲を示したばかりのジェブ・ブッシュ・元フロリダ州知事も「悲惨な人権侵害国家の独裁者に報酬を与えた」と批判しました。

 ジェブ・ブッシュ氏の夫人はヒスパニックで、ブッシュ氏自身もカトリックに改宗しているなど、米国内のキューバ移民を含むヒスパニックに大きな影響力を持っています。

 つまり次期大統領選挙でも共和党の攻撃材料とされてしまいそうな決断となりそうです。

 一方でキューバおよびキューバ国民には経済的メリットが大きく、大賛成であると伝えられています。

 ただ国民1人あたりのGDPが300ドル程度のキューバに、米国から資本が殺到すれば(するはずです)、地上で唯一正しく機能している社会主義国家かもしれないキューバが「あっと」いう間に急激なインフレに襲われ、バブルまみれになってしまうはずです。

 つまりキューバ国民にとっても問題が多いことになります。

 どう考えても「いったい誰のためなのか」がよくわからない、大変に困ったオバマ大統領の決断となりそうです。