1999年1月の「初値」水準まで下落したユーロの対ドル相場

 昨日に続きギリシャ債務危機再燃とユーロ離脱について書くつもりだったのですが、本日は同じユーロでも少しポイントを変更しました。ギリシャは新たな動きが出たときに続けます。

 本日(1月7日)発表されたばかりのユーロ圏・2014年12月の消費者物価指数は、前年同月比で0.2%の下落となりました。リーマンショック時の混乱期以降約5年ぶりの下落で、2011年秋の3.0%上昇から伸び率は一貫して低下して遂に下落に転じてしまいました。

 ユーロ圏は従来から明確な物価上昇目標(2%)を掲げているため、これで1月22日のECB理事会(今年からFOMCと同じ年8回開催となります)では域内の国債を大量に買い入れる量的緩和の導入が「改めて」期待され、ユーロが対ドルで下落しています。

 実際にECBが量的緩和に踏み切るかどうかは近いうちに書くことにしますが、ユーロの下落は、ギリシャ債務危機再燃・ユーロからの離脱、原油価格の続落で距離的に近いロシア経済が一層混乱するなども含めた「複合要因」です。

 ユーロは日本時間の本日午後9時前には1ユーロ=1.1820ドルまで下落しました。対円では1ユーロ=140.80円です。

 このユーロの対ドル相場は、過去ギリシャをはじめとする債務危機問題が深刻化していた2010年6月の1ユーロ=1.1876ドル、2012年7月の1ユーロ=1.2040ドルを下回りました。

 対円では超円高の時代だったため2010年6月は1ユーロ=107.30円、2012年7月は1ユーロ=94.12円で、現在でもかなりのユーロ高・円安です。

 ところが現在の1ユーロ=1.1820ドルとは、ユーロの「初値」である1999年1月2日の1ユーロ=1.1792ドルとほとんど同水準です。対円の「初値」は132円でした。

 「相場なのでそんなこともあるだろう」と思われるでしょうが、少し考えてみましょう。

 その後のユーロは、2000年9月の1ユーロ=0.8252ドル(対円では89円)まで下落したものの、そこからリーマンショック直前の2008年7月に1ユーロ=1.6036ドル(対円では169.94円)の高値まで約8年間も上昇を続けます。

 「初値」当時のユーロとは単なる欧州のローカル通貨に過ぎず、世界の基軸通貨はドルだけでした。ところが2000年のITバブル破裂や2001年9月の同時多発テロなどから米国(ドル)一辺倒の国際通貨体制が徐々に見直され、ユーロがドルと並ぶ基軸通貨としての信認を確保しはじめ、それに伴いドルからユーロへのシフトが始まりました。

 その結果リーマンショック直前までのユーロの長期的上昇となります。

 ところがその直後のユーロは世界金融危機でわずか3か月後の2008年10月には1ユーロ=1.2328ドル(対円では113.60円)まで急落してしまい、その後も2度にわたる債務危機問題に見舞われて下落し、今回は3回目の危機が近いと再度の下落となっています。

 つまりリーマンショック以降の度重なる債務危機や最近の景気低迷の影響で、唯一の基軸通貨であるドルからユーロへのシフトが「大変に遅れた」と考えます。

 現在の国際金融体制での役割分担では、大雑把にいってドルが3分の2、ユーロが4分の1です。しかしユーロ圏と米国の経済規模はほぼ同じであるため、長期的にはユーロの役割(単純にいえば世界で保有される額) はもっと大きくなるはずです。

 つまりユーロの対ドル相場の「本来の姿」とは、現在の水準よりもかなりユーロ高・ドル安であるべきところが、実際には再度の下落で1999年1月の「初値」とほとんど同じ水準までバックしていることになります。

 1999年1月のユーロの「初値」以降、国際金融市場では少なからずのドルからユーロへのシフトが起こっていたにもかかわらず、ユーロの対ドル相場は「初値」近辺までバックしているのです。

 これでもってユーロがすぐに対ドルで反発すると考える必要はありませんが、長期的にみて「おかしいほど安い水準である」ことは頭の片隅に入れておくべきです。