原油価格の下落は一過性ではない

 連休明けの本日(1月13日)、アジア時間で原油価格先物WTI)が1バレル=45ドルを割り込みました。

 自称「イスラム国」が成立した昨年6月には1バレル=107ドルだったので、半年余りで実に半値以下になってしまいました。

 直接のきっかけはOPECの盟主であるサウジアラビアが、シェールオイル生産量が急増する米国に対して世界シェアの確保を狙って仕掛けたチキンレースですが、むしろ「それだけでここまで価格が下落してしまった」ことの方が重要です。

 そもそもサウジアラビア財政赤字転落を覚悟で、OPECのシェアを維持しなければならなかったことも重要です。サウジアラビアは豊富な石油輸出代金を湯水のごとく使っていたため、1バレル=85ドル以下では財政赤字となってしまいます。

 どう考えても原油は世界中で「余っている」ことになります。しかしこれは原油に限ったことではありません。

 何度か書いているのですが、現在の世界経済はリーマンショック以降の世界的な金融緩和・量的緩和の景気回復効果を「過大評価」していた結果、世界の(特に中国の)需要を大幅に読み違え、気がつけば世界的な過剰設備・過剰生産・過剰在庫状態に陥っていました。

 特にFRBリーマンショック以降に総資産が5倍になる大胆な量的緩和を行ったため、ドルが実質ドル建てで取引されている資源(金、原油、銅、鉄鉱石など)に対して減価する効果も「過大評価」してしまい、やはり世界的に資源全般の過剰開発・過剰生産・過剰在庫状態にも陥っていました。

 最も早く価格が下落した資源は、2011年夏に1オンス=1904ドルの史上最高値をつけた「金」で、2013年4月に突然1オンス=1600ドルから1300ドルまで急落しました。

 重要なことはその後も金価格はほとんど反発することなく、現在も1200ドル前後となっています。

 原油価格は、たまたまオバマ大統領の中東政策が迷走に迷走を重ね、挙句の果てに「イスラム国」まで出現したため、昨年6月頃まで「高値」が維持されていただけです。 

 つまり原油とは「価格調整が最も遅れた資源」であり、それだけ価格下落が急激で大幅となっているのでしょう。

 つまり金価格などの世界的に急落した資源価格はほとんど回復していないため、原油価格も多少の反発はあっても本格的に上昇する可能性は「ない」と考えておくべきです。

 先ほど書いたように原油などの資源全般だけではなく、鉄鋼や造船などの主要製品のほとんどが世界的に過剰設備・過剰生産・過剰在庫状態に陥っていることになります。

 実は世界で最も大きな過剰設備を抱えてしまった国が中国ですが、中国経済については別の機会に書くことにします。

 そしてこの状況は間違いなく資源国・新興国の経済基盤が急激に弱体化し、経済危機・金融危機に陥る国が出てくる可能性が「格段」に上昇していることを意味します。

 具体的にはロシア、ウクライナギリシャ、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラあたりは「いつ危機に陥ってもおかしくない状態」で、まだ大丈夫ですが要警戒が南アフリカインドネシア、マレーシアあたりと思われます。

 最大の問題は、世界で最も経済が好調で最も金融引き締めに近いと考えられる国が基軸通貨国の米国であることです。この状況はアジア危機、ロシア危機、ヘッジファンド危機(LTCM)が連鎖的に発生した1997~8年に非常に似ています。

 こういう中でFRBが春以降に金融引き締めに入れば、間違いなくトリガーとなります。

 市場では依然としてFRBの金融引き締め開始が4月とか6月など「無頓着な予想」が飛び交っていますが、米国の金融引き締めは新興国・資源国に最もダメージを与えると考えておかなければなりません。