ECB理事会が近づく

 1月22日のECB理事会では、ECBが日銀型の資産購入いわゆる量的緩和に踏み切るかどうかが注目されています。この資産とはユーロ圏各国の国債となります。

 そんな中、フランスのオランド大統領が1月19日に「ECBは国債を購入する決定をするだろう」と勝手に量的緩和を決めてしまい、市場をすっかり「その気」にさせてしまいました。

 ECBの政策金利は昨年9月に基準政策金利を0.05%、上限金利の限界貸出金利を0.30%、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.20%にそれぞれ引き下げました。つまり銀行がECBに預金すると年間0.2%の手数料を徴収されるマイマス金利となっています。

 しかし従来のECBはLTROなどで域内銀行に積極的に資金供給していますが、日銀型の資産購入(量的緩和)は行っていません。昨年9月に証券化された貸出債権(ABS)の購入を決めていますが、これはあくまでも貸出促進策の一環です。

 それでは1月22日にECBは、オランド大統領のご託宣通りに資産買入れ(量的緩和)に踏み切るのでしょうか?

 本誌は今まで一貫してECBは量的緩和に踏み切ることはないと書いてきました。

 今もそう考えていますが、もし1月22日に量的緩和に踏み切ってしまうと、政治的な圧力に屈した結果であると考えます。

 ECBに限らず金融緩和の目的とは貸出しを増加させて景気を回復させるためであり、銀行に潤沢な資金を供給することと十分な利鞘を確保させることが必要です。

 ECBは昨年9月と12月に域内銀行への貸出支援として、低利で(限界貸出金利の0.3%を大きく下回る0.15%で)資金を最長4年間、ほぼ無制限に貸出すとしていますが、実際の希望額はそれほど多くありません。

 ここで仮にECBが量的緩和に踏み切ってしまうと、すでにかなり低下している域内諸国の長期国債利回りがさらに低下し、それがそのまま貸出金利の低下を招き、ますます貸出が低迷してしまいます。

 本日(1月20日)欧州時間午前中のユーロ圏各国の10年国債利回りは、ドイツ国債が0.44%(昨年初めは1.93%)、フランス国債が0.63%(同2.56%)、イタリア国債が1.66%(同4.12%)、スペイン国債が1.51%(同4.15%)、財政支援を受けたポルトガル国債でも2.72%(同6.13%)と、尋常でない利回りの低下となっています。

 つまり昨年でもECBの潤沢な資金供給にかかわらず貸出が低迷していた欧州諸国において、そこからさらに金利水準が大きく低下して利鞘が急激に縮小している中で(基本的には貸出金利は長期国債利回りに連動しています)、急に貸出が増えるはずがありません。

 つまりECBが域内の国債を積極的に買い入れる量的緩和に踏み切るということは、今でも縮小している銀行の利鞘をさらに縮小させることになり、大変に矛盾した政策となります。

 この矛盾を取り除くためには政策金利をスイス並みに引き下げて大幅のマイナス金利として利鞘を無理矢理に維持するしかありませんが、ドラギ総裁はそこまで愚かではないはずです。

 つまり1月22日にECBが量的緩和に踏み切るとすれば、ECBとドラギ総裁が政治的圧力に屈してしまったことに外ならず、それはそれで大きな禍根を残すことになります。

 息をひそめて決定を待つことにします。

 ところでこの理屈は日本でも同じですが、日銀は当座預金金利に0.1%の利息を支払いながら、長期国債を含む国債全般を「異次元」に買い続け、本日にはとうとう10年国債利回りが0.20%になってしまいました。

 ところが日本の銀行は大変に高コスト体質なので、預金金利はほとんどゼロであるにもかかわらず、長期貸出金利は1.1%を下回れません。

 つまり日本の長期国債利回りがこれ以上低下しても、それは貸出金利に全く反映されない「無駄な利回り低下」となります。