雪国まいたけの「奇怪」なTOB

 2月23日に米国資ファンドのベイン・キャピタルが、雪国まいたけ東証2部上場・コード1378)の自己株を除く発行済み全株を対象に1株=245円で公開買い付け(以下「TOB」)を行う「予定」であり、雪国まいたけの現経営陣は提案をうけて「検討」しているとのIRが出されました。

 翌24日には雪国まいたけの取締役会がTOBへの賛同を決議し、同日から4月6日までを買付け期間としてTOBが開始されました。自己株を除く発行済み全株を買い入れると88億円ほどになります。

 一見すると経営権譲渡を前提とした友好的買収にみえ、また報道も好意的なものが多いようですが、その実態はとんでもなく「奇怪」なものです。

 雪国まいたけの創業者である大平喜信氏は、2013年11月に過年度の不適切な決算処理を修正した責任をとって代表取締役社長を辞任しましたが、現在でも資産管理会社を合わせて57.3%を保有する圧倒的大株主です。

 辞任した大平氏は、これからも雪国まいたけへの影響力を維持するため4名の取締役追加選任などを議題とする臨時株主総会開催を求めていましたが、本年1月15日に新潟地方裁判所長岡支部から本年3月31日までに臨時株主総会を開催する許可が出されました。

 ところが冒頭のTOB「予定」のIRが出た同日、何と大平氏と資産管理会社の持ち株を担保に融資していたと思われる第四銀行が担保権を行使して39.2%の大株主となり、同時に当該TOBに応募する予定であるとのIRが(雪国まいたけから)出されました。

 さて具体的にどこが「奇怪」なのでしょう?

 

 まず冒頭の2月23日付けIRではTOBが「予定」であり、雪国まいたけが「検討」しているとわざわざ強調されていたのは、第四銀行が未発表のTOBに応募するために担保権を行使して株式を取得してしまうとインサイダー取引の疑いが強くなるからと思われます。

 ここからは専門的になり過ぎるので控えますが、第四銀行の株取得はインサイダー取引にあたる可能性があります。

 次に第四銀行が担保権を行使して(そこで正当な手続きを踏んでいたかどうかは確認できないため議論しません)大平氏と資産管理会社の株式を取得したとしても、第四銀行が正当に主張できる権利はその「経済的価値」だけのはずです。

 株式に付随している「株主権」まで主張することには無理があります。もっと単純に考えると、3月31日までに開催される臨時株主総会の基準日は2月3日に設定されているため、百歩譲って「株主権」まで第四銀行に帰属しているとしてもそれは担保権を行使した2月23日からであり、大平氏と資産管理会社は大手を振って来る臨時株主総会に出席して議決権を行使できるはずです。

 臨時株主総会の開催日が決定されていないようですが、新潟地方裁判所長岡支部の臨時株主総会開催許可は大平氏(の関係者)に出されているため、雪国まいたけが無視しようとTOBが進んでいようと開催許可が消えてしまうことはなく、大平氏(の関係者)はさっさと開催日と開催場所を決めてしまえばよいだけです。

 IRをよくみると雪国まいたけの現経営陣は、大平氏らの基準日設定公告が定款に定めていない官報に掲載されたため無効であると主張しているようです。これも細かくなりすぎるので控えますが、あまり効果のない主張です。

 しかし最も「奇怪」なところは、雪国まいたけの現経営陣が「かくも過激な手段」に訴えてまで雪国まいたけを外国ファンドに売り渡してしまおうとしているところです。

 ベイン・キャピタルの今回の手法はまだ明らかにされていませんが、TOBに必要な大半の資金TOBのために設立したペーパー・カンパニーが借入れ、TOBが成功するとその「借金を抱えた」ペーパー・カンパニーを雪国まいたけと合併させてしまうはずです。

 つまりベイン・キャピタルは、ほんの少しの自己資金雪国まいたけの経営権を取得し、そのために借り入れた資金はすべて雪国まいたけに押しつけてしまいます。これから雪国まいたけが稼ぎ出す収入の大半は、ベイン・キャピタルのTOB資金の返済に充てられることになります。

 雪国まいたけの現経営陣は、こんなベイン・キャピタルの暴挙を推進するために「かくも過激な手段」と「かくも多大な法務リスク」をとって全面協力しているのです。

 同じような外国ファンドによる暴挙を取り上げた2014年10月10日付け「すかいらーく再上場 MBOの損得勘定」、同年7月18日付け「ローランドMBOを考える」も併せて読んでみてください。両方ともMBOとなっているのは形式的に当時の経営陣を参画させていたからですが、今回のTOBとほとんど同じ意味です。