アジアインフラ銀行は中国「融資平台」の国際版

 いつも書くことですが、日本などの世界経済にとって中国経済をめぐる最大の恐怖は、成長率が7%程度まで鈍化することでも理財商品がデフォルトすることでもありません。

 中国とは共産党1党独裁の計画経済であるため、発表されるGDPなどの各種経済統計はすべて積み上げられた「目標数字」に過ぎず、誰も中国経済の本当の規模も成長率もわからないことです。

 最大の問題点は、その誰にもわからない中国の経済規模とくに需要を前提に世界中が設備投資や資源開発を行い、気が付けば世界中が過剰生産・過剰資源開発に陥ってしまっていることです。

 その中でも最も需要を読み間違えたのが当の中国企業であり、中国国内では報道されているよりもはるかに深刻な過剰設備・過剰生産・過剰在庫(そして過剰借入れ)に陥っているはずです。

 つまり中国経済とは、何をさておいても大至急でこれら「過剰」の受け皿を「世界のどこか」に作り出す必要があり、その「どこか」とはアジア諸国のことであるはずです。

 そういうところにアジアインフラ銀行の設立準備が進んでいます。

 アジアには同じような機能を持つアジア開発銀行(ADB)がありますが、その運営は日本と米国が主導権を握っているため(総裁も旧大蔵官僚の最上格の天下り先として確保されています)、中国としては自らが主導権を握るためにアジアインフラ銀行を新たに設立しようとしているのです。

 アジアインフラ銀行の構造は不明ですが、資本金1000億ドル(ADBは1650億ドル)の約半分を中国が出資し、たぶん高い格付けが取れるため債券発行や世界各国からの借入れでレバレッジをかけ、主にアジア各国のインフラ整備に資金を提供するはずです。

 

 その実態は、もちろんアジア諸国を中国経済にある数ある「過剰」の受け皿にするためであり、その資金を世界中から集めるためのプラットフォームです。まあ例えれば中国の不動産バブルや過剰設備を助長させた「融資平台」の国際版です。

 ただアジアにはADBがあるため、中国政府は盛んに「ADBには融資審査など運営面に懸念がある」などのネガティブキャンペーンを行っていますが、中国はその「懸念があるADB」から最大の(全体の25%以上の)融資・投資を受けいれています。

 中国人の自分勝手で厚かましいところは今に始まったわけではありませんが、そのアジアインフラ銀行に英国・ドイツ・フランス・イタリア・ルクセンブルク・スイスなどの欧州各国が参加を表明しています。

 またあろうことかオバマ大統領まで世銀やADBとの共同出資事業を提案し始めたようです。

 欧州各国の思惑は、中国とは距離も遠く政治的な軋轢は少ないため、アジアインフラ銀行に参加することにより中国マネーや中国市場とのつながりを強化するという純粋の経済的動機であり、オバマ大統領は米国内ではもう誰も相手にしないため思い付きで勝手なことをいっているだけで、さすがに米国の総意ではありません。

 さて我が国はどう対応すべきなのでしょう?

 「欧州各国が参加を決めているので日本も取り残されないように早く参加を表明すべきだ」とか「欧州と日本が参加すれば中国の思い通りに運営させない」など、恐るべきトンチンカンな評論が目立ちます。

 完全に無視すべきです。

 参加(出資)はもちろん、アジアインフラ銀行への資金提供(債権引き受けや融資)は一切行わないと表明すべきです。

 「我が国(日本)はADBの最大出資国として、アジア諸国の経済発展のために与えられた使命を今後とも懸命に果たしていくため」とでもしておけば、十分に納得できる説明となります。

 安倍内閣の、経済センスと国際的バランス感覚が問われます。