ところで野村ホールディングス(野村證券)はどうしている?

 4月10日に野村ホールディングス(以下、「野村HD」)の永井浩二CEOが、新規株式公開(IPO)後に業績の下方修正や不祥事で株価が急落する事例が相次ぐ状況について「若干感覚が甘い会社もあることは事実だ」と述べ、適切に指導していく考えを示したと報道されています。

 まさにその事例に相当するgumi(東証1部上場・コード3903)の主幹事を務めた野村HDのCEOとしては、あまりにも他人事のような発言に批判もあるようです。

 本誌は野村證券の前経営トップのあまりにもお粗末な経営に対して批判記事を数多く書きましたが、一応は(直接の原因は増資インサイダーでしたが)経営責任をとって辞任しているので、その後は一切の批判をやめていました。

 永井CEOの発言も全体の脈絡を読む限りではそれほど他人事でも唯我独尊でもないため、これでもって野村證券が奢っているとか、けしからんなどというつもりもありません。

 また本来は新規株式公開(IPO)に最終責任があるはずの日本取引所グループも、4月3日付け「日本取引所グループが不適切なIPO に対応策」で書いたように全く他人事ですが、これも斉藤惇CEOが旧大蔵省の天下り要請を食い止めて退任されるようなので、これ以上は批判するつもりもありません。

 しかし日経平均が15年ぶりに一時20,000円台に乗せる環境のなかで、最近は野村證券の存在感が非常に小さくなっているような気もするため、久々の登場となります。

 

  野村HDの2015年3月期の通年決算は4月30日に発表されるようですが、2014年4~12月の9か月間の純利益は1427億円と、同時期の大和証券G本社の1099億円と比べても突出しているわけではありません。

 また少し前に「株価バブル」だった2006年3月期の通年純利益は3043億円だったため、株価が当時を上回っているにもかかわらず届きそうもありません。

 要するに現在の野村HDは、日本の証券市場において圧倒的な地位を築いているわけでもないことになりますが、本誌が野村HDについて「本当に気になっている」ところは、ここでもありません。

 金融危機以前に住宅ローン担保証券MBS)を不正に販売したとして米国連邦住宅金融庁(FHFA)が野村HDを訴えた件は、3月16日にNY南部地区連邦裁判で審理が始まりました。

 FHFAは野村HDに対し10~11億ドル(1200~1320億円)の損害賠償を要求しているようです。FHFAは2011年に野村HDを含む金融機関18社を提訴していたのですが、すでに16社と和解が成立しており合計180億ドル(2兆1600億円)もの巨額和解金が支払われました。野村HDは、この件で本格的な法廷闘争に持ち込んだ「最初」のケースとなります。

 180億ドルというのは、あくまでもFHFA(傘下のFNMAとFHLMCを含む)に対する和解金であり、米司法省やSECへの和解金を加えると倍近くになります。

 解決していないもう1社はロイヤル・バンク・オブ・スコットランドRBS)ですが、こちらは実質的に英国政府の公的支援下にあるため、野村HDだけが「米国政府の巨額罰金ビジネス」に孤独な戦いを仕掛けることになります。

 勝てるはずがなく10~11億ドルの「満額回答」あるいは「懲罰的な割増賠償金」が求められるはずで、決して法廷闘争は得策ではありません。米国政府の巨額罰金ビジネスについては2014年6月19日付け「したたかな米国政府ビジネス」を参考にしてください。

 さらに野村HDはモンテパスキ銀行から、同行の損失隠しに加担してデリバティブ取引で損失を与えたとして2014年11月に15億ユーロ(1920億円)の損害賠償を求める提訴をされています。

 これは正確にいえば野村HDがデリバティブ取引の履行を求めて先に提訴しており、その反訴となります。しかしどう考えても「完全アウェー」の戦いで勝ち目はほとんどありません。こちらは2013年4月19日付け「世界最古の銀行・モンテパスキを巡る騒動」を参考にしてください。

 さらに思い出す限りでもイタリア・シチリアマドフ清算財団などからも訴えられているはずで、あまりにも遅く、あまりにも問題ある対応が大変に気になります。

 久々に野村HDが頻繁に本誌に登場することになりそうです。