オリンパス事件の光と影 その16

 しばらくお休みさせていただきましたが、再開します。

 オリンパス事件を総括する新刊書を執筆中ですが、新事実や新解釈(今まで間違って解釈されていた事実)もかなり出てきて、それなりに充実した内容に仕上がってきています。

 ところがその最中に、またまた新事実が出てきてしまいました。

 オリンパスが5月8日(先週金曜日)取引終了後の午後3時半に「当社子会社に対する米国司法省の調査に係る特別損失の計上及び通期連結業績予想と実績値の差異に関するお知らせ」なるIRを出しました。

 要するに業績の下方修正だったのですが、同時に2015年3月期の通期連結決算短信もIRしているため、かなり問題ある情報開示方法です。業績修正と決算短信が同時に出ることは珍しくありませんが、その修正が「重大なもの」ならその必要性が認識された時点で遅滞なくIRすることが株主に対する正しい情報発信のはずですが、きっと「大した修正ではない」とでも考えていたのでしょうね。

 しかしその内容は、オリンパス米国子会社の医療関連事業に関して2011年11月時点より米国司法省の調査を受けており、協議の進捗状況を鑑み539億円の特別損失を計上するため、2015年3月期の最終損益を従来予想の450億円の利益から87億円の損失に修正するという「かなり重大なもの」でした。

 米国司法省の調査とは、医療機械の販売で病院や医師に禁じられているリベートを支払っていた事実に対するもので、かなり以前から恒常的に禁止行為が行われていた可能性があります。

 そしてこの調査が開始された2011年11月とは、まさに例の巨額損失隠し事件が発覚していた時期と重なり、この件で逮捕された菊川剛・元社長は1990年代の後半にこの米国子会社の会長だったことがあります。

 

 本誌が見落としていた可能性もありますが、2011年11月以降、米国子会社がこの問題で米国司法省の調査を受けていた事実がオリンパス側から発表されたことはないはずです(守秘義務が課せられていた可能性はあります)。

 要するに米国政府の「巨額罰金ビジネス」の対象になってしまったわけですが、実はオリンパスにとっては支払いが巨額(539億円)である以上に、もっと重大な意味があります。

 オリンパスの巨額損失隠し事件は米国も重要な舞台となっただけでなく、米国にも大勢の株主がいるため、必ず米国司法省とSEC(証券取引委員会)が調査・捜査に入るはずです。最終的には巨額の和解金あるいは罰金が課される可能性があります。

 オリンパス事件は米国では証券詐欺の重罪となるため、米国司法省でも警察機関であるFBIの管轄です。すでにFBIは巨額損失隠し事件に重大な(というよりも積極的な)役割を果たした佐川肇とチャン・ミン・フォンを証人として確保していますが、なぜかそこから時間が不自然にかかっていました。

 その理由が、ようやくわかりました。単に順番に片づけていただけです。

 日本では表沙汰になっていなかった米国の医療事業関連事件が一件落着となったため、いよいよ巨額損失隠し事件に取り掛かるはずです。「もしかして見逃してくれるのでは?」などの淡い期待は米国政府の「巨額罰金ビジネス」の前には無力です。

 オリンパスは巨額損失隠し事件では日本の裁判でも全く戦わず、すべて検察側の主張を全面的に認めてしまったのですが、これは米国での裁判を著しく不利にしてしまいます。改めて反論することが全くできないため、恐ろしいほどの額の和解金あるいは罰金を課されてしまうことになりそうです。

 蛇足ですがオリンパスは同じ5月8日に、巨額損失隠し事件の際に銀行(メインバンクの三井住友銀行三菱東京UFJ銀行)が押し込んでいた2名の取締役(1名は会長)の退任を発表していました。

 巨額損失隠し発覚の直前の2011年9月時点では長短合わせて5548億円もあった銀行借り入れが、直近の2015年3月時点では2994億円まで減少しているので(つまりこの間に2554億円も回収している)、銀行サイドももう安心と考えたのでしょう。

 どうも、もう安心とはいかないようです。

 この辺りも、執筆中の新刊書にたっぷり盛り込むことにします。

 お楽しみに。